「偉大なる、しゅららぼん」感想


 鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ万城目学原作。琵琶湖を舞台に、湖の民として代々不思議な力を持つ一族同士の争いと、それによって巻き起こる大騒動を描いたファンタジー小説を、アヒルと鴨のコインロッカー濱田岳×「悪人」岡田将生主演で映画化。


 一見、奇を衒ったインパクト重視、出オチ覚悟の一発ネタ映画かと思わせといて、実はまったくそのとおりの内容。

 物語としての筋道はしっかりしているし、散りばめられた伏線もほとんどキレイに回収、構造そのものを見れば、確かによく出来ている。が、単に小生の感覚に合ってないのか、はたまたセンスがあまりよろしくないのか、如何せん肉の部分、つまりキャラクターやその設定等に魅力がなく、面白さに結びついていないように感じた。

 例えば、濱田岳演じる主人公の一人、日出淡十郎。時代錯誤な殿様口調と常に上から目線の態度に軽くイラッとくるのと、彼が抱えている「秘密」について、かなり早い段階でおおよその察しがついてしまうのはともかくとして、結果的にそれ以上のモノがなかったのは正直痛い。多少、成長らしき部分もなくはなく、それなりに物語のキーマンとして機能はしているものの、どこか取って付けた感、あるいは歯車がかみ合っていない居心地の悪さを覚えてしまった。

 彼に限らず、実力派俳優陣が多数顔を揃え、ある意味それでバランスを保っている観もあるが、逆に言えば、キャスティングに大部分助けられている事にもなる。まあ、濱田岳はともかく、岡田将生くん渡辺大がどう考えても高校生に見えないのはこの際置いといても、家が彦根城、船頭さんの船で通学、赤い学ラン、引きこもりなのに馬で移動、その他諸々が、微妙に繋がっているようで少しずつズレている、あるいは線になっているようで点のままで留まっている感じ。もっと言うなら、一つ一つのジャブはそこそこ効いてるし、ワンツーも入っているが、決定打になるコンビネーションや強烈な一発が打てていない、全体的にそんな印象を受ける作品だった。

 前二作の鴨川ホルモープリンセス・トヨトミの感想でも書いた気がするが、どうもこの万城目学は、奇抜なアイディアを思いつく才能はあっても、それをうまくストーリーに取り込むセンスがあまりよろしくないらしい。著書を読んだ事がないので、これがどこまでオリジナルに忠実かは存じ上げないが、次に同氏の原作を映像化する際は、その辺をうまく補完してくれる監督か脚本家と組まれた方がよろしいのではと、勝手な提案をしておく。


 ところで、一つ分からない事が。作中、入学式早々因縁をつけてきたリーゼントの葛西くん。翌日彼を、校庭のバスケコートに縛り付けてチョンマゲにしたのは、結局誰だったんだ。あとどうでもいいけど、棗潮音役の柏木ひなた、ムダに可愛かった(笑)。


 ☆☆☆★★

 で、岡田くんのトランペットも結局何だったの?「サンライズ」がやりたかっただけ?星3つ!!



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