「劇場版　BLOOD-C　The Last Dark」感想

　2011年7月から9月まで放送されたテレビアニメの劇場版にして、完結編。浮島地区での虐殺から約半年、東京を舞台に、異形の怪物「古きもの」を狩る少女・小夜の復讐劇を描く。

　曰く「映画として独立した作品を目指した」そうだが、なんとも釈然としない作り。オチはともかく、テレビシリーズから観てきたユーザーが、果たしてこれで納得するのか甚だ疑問が残る内容だった。

　青少年保護条例やネット規制等の風刺ネタ、さらに秘密組織「塔」とそれに抵抗する組織「サーラット」との抗争といった要素を盛り込んではいるものの、物語としての厚みに欠け、とにもかくにも中身が薄い。
　　確かに、ストーリー構成としてはほとんど矛盾なく、上手くまとまってはいるのだが、主軸である「小夜の復讐劇」とそれらに相乗関係が見出せず、むしろ全体的に観れば蛇足にすら感じてしまった。

　同時に、お世辞にも登場人物の特性を十二分に使いこなせていたとは思えず、小夜とラスボス（念のため）を除く、よほどの主要キャラ2、3人以外の行動理念、場合によっては言動挙動が理解しがたい場面もしばしば。
　特にそれが如実なのが、サーラットの運転手くんとメガネハッカーくん、および塔の忍者さん。ともに、何のためお互いの組織に属しているのか、何故そうまでして協力、ないし忠誠を尽くすのかさっぱり見えず、悪い言い方をすれば、ただ便宜上そこにいただけ。
　後者に至っては、人間を殺せない小夜に対し、実力も含めて圧倒的有利だったにも関わらず、わざわざ負けフラグを立てた挙句、ほぼ自爆というお粗末な最期。

　本作のもう一人の主人公と言うべき少女・真奈に関しても、声を演じた橋本愛の芝居の拙さはさておき、彼女の隠された能力、および父親のエピソードを含め、効果を発揮できていたとは、とても言い難く。
　小夜を別の視点（人間の側）から観る、非常に重要なポジションであり、作品を完成度を大きく左右する存在だっただけに、実に勿体ない。

　例によって例えば、なのだが、サーラットがただネットで情報を集めるだけの連中でなく、一個師団並みの武装と修練を整えたアングラ軍団なら、刀と銃器の連携プレイ、あるいはそこから生まれるドラマなど、より見応えのあるモノができたはず。
　基本、戦うのは小夜一人、しかも異形の化け物相手（それ以外もいるにはいるが）とはいえポン刀を振り回すだけでは、いくらI.G入魂の作画アクションとはいえ、少々物足りなさを感じてしまう。
　そこは本シリーズの魅力と言われればそれまでだが、もう少し、金を払って映画館に足を運んだユーザーに対し、同等かそれ以上のサティクファクションを提供していただきたいところ。

　テレビシリーズの頃から思っていた事だが、やはり本シリーズとCLAMPは、雰囲気的にまったく合っていないように思う。
　片や、血を求めて異形のモノを狩る少女の、殺伐バイオレンスストーリー。片や、長年独自の世界観で根強いファンを持つ、プロ漫画集団。お互いがよりよい物を作るべく、それぞれの個性を出し合い、ぶつけ合った結果、どちらの長所も生かしきれずに中途半端で終わった印象を受ける。
　単純に言って、おにぎりの中のチョコレートがごとく、元々の相性が悪い。
（どちらか一方が悪いという意味ではない。念のため）
　あくまで私見だが、本作に望まれていたのは、もっと重厚で、もっと血生臭く、生への渇望と絶望、死への娼嫉と恍惚を孕んだ、ある種の精神的リアリズムだと察する。CLAMPの作風は嫌いではないが、そう仮定すると、どうもまったく対極に位置する存在同士だったのではないかと思うが、いかがだろうか。
　四月一日（わたぬき）やモコナといったお馴染みのキャラ登場にも、違和感しか感じられなかったのは、きっとせいだろう。

　決して不味くはない。それなりにいい素材も使っている。しかし見た目に反して超薄味な上、驚くほど口当たりが軽く、ボリューム分食った気にならない。食べ物で例えるなら、そんな作品。
　はっきり言えば、本放送を観ていた人が必ずしも映画が観られる環境（経済的、地理的な意味で）ではないため、この手の商法は心の底から大嫌いなのだが、どうしてもテレビシリーズの結末が気になるという方、あるいは小夜のおっぱいポロリがどうしてもスクリーンで観たい人なら、映画館に行っても良いかと。ただし、レイトショーかサービスデーに。

　それ以外の人は、ぶっちゃけDVDで充分。商法的にも作品的にも、こういうのはもういいです。

　そんなわけで、小生の評価は…、

　☆☆☆★★−

　おっぱい分オマケの星３つマイナス！

　つーか敵の本拠地、ネット上の地図に載ってないのに、肉眼で確認できたらボロバレだろ。まったくわけがわからないよ。僕と契約して魔法少ｊ（以下略）。