「謝罪の王様」感想


 舞妓Haaaan!!!」「なくもんか」を手がけた水田伸生(監督)×宮藤官九郎(脚本)×阿部サダヲ(主演)トリオによる最新作。様々な謝罪のテクニックを駆使し、ありとあらゆるトラブルを解決する「謝罪師」の活躍を描く、土下座(?)コメディ。


 相当にムチャでぶっ飛んだ設定ながら、妙に説得力のある数々の謝罪豆知識と、強引なまでのスピーディな展開で、観客を飽きさせない。多少、勢い任せすぎる部分はあり、後述する問題点などもあるにせよ、パズルのように散りばめられた伏線を回収しつつ、しっかり笑いへと昇華、ついでにちょっとイイハナシにまで持って行ってしまう手腕は、さすが天下のヒットメイカ宮藤官九郎脚本といったところか。

 出演者もポジショニングも抜群で、例えば大物俳優演じる高橋克実が醸し出す絶妙な胡散臭さ、中堅サラリーマン演じる岡田将生くんのいい具合のチャラさ加減、国際弁護士演じる竹野内豊の渋イケメンぶりを逆手に取ったオッチョコチョイ演出等、キャラクターにドンピシャなキャスティングなのはもちろん、その俳優でなければ出せなかったであろう魅力を最大限に引き出し、ともすればくだらないだけで終わってしまいかねないこの物語に、人間臭さとおかしみを纏わせる事に成功している。

 中でも特筆すべきは、やはり主演の阿部サダヲと、ヒロイン演じる井上真央の二人。
 太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-」「夢見るふたり」ではシリアスな芝居もこなし、実は俳優として非常に高いポテンシャルを持つ事でも知られる阿部氏だが、笑顔一つで作品世界をも作り上げてしまうあの芸当は、もはや反則を通り越して匠の粋(笑)。本来なら到底あり得ないようなストーリーでも、彼が中心にいる事で何故か成立してしまうのだから、まったく不思議としか言いようがない。ご本人も自覚されている事と察するが、あの顔は立派な氏の武器だ。
 また、井上真央は彼女のいい意味でのアクのなさ、分かりやすく言えばどんな役でもすんなりと、しかも十全以上にこなせるハイスペックぶりがうまく機能し、且つ生かされた結果と評しておきたい。世間的には花より男子牧野つくしに代表される、男どもと対等に渡り合う硬派な女のイメージが強いのかもしれないが、本作のような宇宙人ちゃん系や、「八日目の蝉」のような繊細な少女も演じられる貴重な女優なので、小生一押しの桜庭ななみ同様、これからもバンバン難役に挑戦していただきたい。

 なお余談だが、個人的にはものすごいタイミングで登場し、これまたものすごい役を演じられた嶋田久作にも、拍手をお送りしたい。画面に出てきただけで、思わず吹きそうになるあの存在感。具体的には書けないが、しかも最後の最後にあんな事やられたら、平常心でいられるものか(笑)。そんな氏も含め、登場人物一人一人の行動が緻密に計算されている。コメディとは本来、こういうものでなければと、改めて確信した。


 全体的に非常によくできた作品なのだが、あえて細かいところを突っつくと、どうしても腑に落ちない部分がチラホラ。やはり詳しくは書けないものの、例の俳優がかの国の習慣・風習について知らないわけはなく、ましてあのポーズについて何一つアドバイス的な発言がなかったのも謎。
 それもひっくるめての話しかもしれないが、にしてもかなり早い段階で、最後のオチが見えてしまっているのはいかがなものか。結局何なのか解明されなかった「ケツ毛」の事も合わせ、できればこじつけでもいいので、何かしらの理由がほしかったところ。

 まあとはいえ、そんな事はほとんど気にせず、ただただ気楽に楽しく笑って、ついでに誰にあの時の事謝ろうかなー、あるいは謝ってもらおうかなーと思いながら帰るのがベターな作品かと。ちなみに、小生が謝ってほしい人物は、今まで出会った人の約半数です(エー)。


 ☆☆☆★★++

 それからEDのダンス、あんなに尺いらない。星3つプラスプラス!!

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