「アーロと少年」感想


 ピクサー・アニメーション・スタジオ製作ピーター・ソーン監督。恐竜が絶滅を免れ、言葉と文化を持った架空の地球を舞台に、臆病なアパトサウルスの子供アーロと、言葉は持たないが勇敢な人間の少年スポットの、友情と冒険を描く。

 さすがにネタ切れなのか、正直過去作と比べると、大きな驚きや新鮮味は少なく、全体的にパンチの弱い印象。とはいえ、そこは天下のピクサー。押さえるところはしっかりと押さえた安定の出来で、貫録の相撲を見せてくれた。

 川の氾濫により、見知らぬ土地へと流されてしまった恐竜の子供アーロが、家へ帰るべく旅をしながら、様々な出逢いと経験を積み重ね、逞しく成長していく過程はもちろん、なぜか行動をともにする原始人の少年スポットとの、種族と言葉を越えた友情、そして強さとは何か、勇気とは、優しさとは、といった普遍的なテーマをキレイに盛り込み、老若男女に分かりやすく、親しみやすい内容に仕上げてある点は、さすがのお家芸

 あまりにシンプルすぎて、やや拍子抜けな面も多々あるものの、物語としては十分に面白く、ちゃんと金の取れるレベルを保ってくるその手腕は、長年培われてきたアニメーション技術と製作論、例えば、言葉が通じない代わりに動きや表情だけでコミュニケーションを図るといった、大時代のカートゥーンの頃から伝わる手法を大事に守り、育んできた結晶と、断じたい。

 まあ、不満点を挙げるとするなら、なぜ主人公が言葉を発する恐竜じゃなければならなかったのか、意図がよく掴めなかった。確かに、かつては車や飛行機、ゲームのキャラクターまでが自我を持ち、自分の言葉で話す作品も多数存在したわけだが、反対に人間が言葉や文化を持たないという、その逆転に大した面白みというか、出オチ以上の効果を感じられなかった。
 片方が言葉を発しない、あるいは言語が分からない設定ならば、単純にひつじのショーンよろしく、向こうも言葉を持っているが、種族が違うので何を言ってるかは分からない、ぐらいでもよかった気が。異論もあると察するが、舞台装置としてはあまり上等とは言えなかったと、個人的には思ってしまった。

 雑な例えではあるが、特大ホームラン級とは言わないまでも、1、2塁センターヒット程度には面白い、そんな感じ。例によって家族で楽しく鑑賞するには申し分ない内容なので、お子様のいるご家庭でも安心して観られるかと。


 ハイ、これ以上書く事ないんで(オイ)、レビューも超シンプルに。


 ☆☆☆★★+

 ちなみに監督、ウッド・ブッシュの声優として出演もしてるそうだよ。星3つプラス!!

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