「間」について

 えー、今朝のラジオで、武田鉄矢椿三十郎について語っておられたので、ちょっと思った事を。

 「時代劇の常識を変えた殺陣」と言われるクライマックス、二人の男がお互いを睨み合う、25秒間の長い沈黙の後、三船敏郎先生演じる椿三十郎が電光石火の早業・逆抜き不意打ち斬りにて、仲代達矢先生演じる室戸半兵衛を屠るという伝説のシーンですが、まあだいたいの裏話は既にウィキペディアや色んな書物で見聞きしていたので、この際割愛します(ところであのシーン、一発撮りだったという説と、実は血飛沫を出すポンプのタイミングがズレて一度NGになっているという説の2通りあるのですが、真相はどちらなのでしょうか)。

 で、小生が気になったのは、その25秒間という「間」世界のクロサワによる映画に対する執念と、名優御二人の尽力の賜物である事は論を俟たないところなのですが、果たしてこの緊張感と殺気を、アニメーションに落とし込む事は可能でしょうか。

 カートゥーンのような音楽や掛け合いによる、いわゆる「お笑いの間」は、得意だと思われます、しかし、本作のように動かさない絵で何かを表現するのは、すごく難しいのではと。

 例えば、上記のシーンよろしく、一瞬で勝負が決するという緊迫の場面を表現するのに、お互い微動だにせず、沈黙で表現するには。お互いの背中越しにキャメラがスライド→目のアップ→固唾を呑んで見守るオーディエンス→静寂を破る何か(水滴、風の音など)→アクション!ぐらいが素人考えの限界ですが、これ以上にまともな方法を思いつきません。

 元々、アニメート=絵を動かして命を吹き込むである以上、動かさない事で表現するという発想自体、ナンセンスかもしれませんが、多くはないものの、そういった仕事をされている作品も、確かに存在します(押井守監督は、比較的そうした演出が上手い方だと察します)。とはいえ、どこまで実写に迫れる作品が作れるのか、非常に興味深いところです。

 もちろん、どっちが上だ下だという意味ではなく、無理に実写に近づく必要はない事は重々承知しています。ただ、「表現方法としての実写とアニメの差異」を考えてみたとき、この問題は大きな壁の一つではないかと、勝手に思ってみた次第です。

 というか、ここ最近こんな事ばっかり考えてます(笑)。それから言うまでもない事ですが、椿三十郎超オススメです。ちなみに織田裕二主演の同名の映画は、日本映画史上なかった事になっているので、ツタヤで見かけてもスルーしてください(エー)。