「寄生獣」「寄生獣 完結編」感想


 岩明均原作のベストセラーコミックを、連載から20年の時を経て、「永遠の0」山崎貴監督「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜」染谷将太主演で映画化。

 例によって前後編合わせてのレビュー。率直な感想を言えば、日本がハリウッドより先にバイオハザードを実写化していたら、だいたいこんな感じになってたんだろうなーといった印象。ぶっちゃけ、それ以上に拾うべき点も、それ以下の感慨も特にナシ。

 原作は、大昔にチラっと数話読んだ記憶がある程度なので、本作がそれにどのくらい添って作られているかは与り知らないが、連載当時流行った薄い似非哲学に、パニックホラーを絡めたような内容。
 正直なところ、その頃からして既に何十年も前に火の鳥デビルマンキカイダー、あるいは三島由紀夫が散々やってきた人間のエゴイズムなり贖罪なりを、いかにもな「俺、今すごくいい事言ってるぜーどうだいカッコいいだろう?」観満載で着飾った、しかし実質そんなに大した事の言ってないスッカラカンな漫画という印象しか持っていなかったが、これを観る限りでは、そんなに偏った見解でもなかったように思われる。

 そこに、安易な御涙頂戴劇と、安直なCG演出大好きな同監督の手が加われば、果たしてどんな作品に仕上がるかは、想像に難くはあるまい。聞けば、原作は多くの識者をファンに持ち、生涯ベストコミックの一つに挙げる御仁もいるらしいが、であるなら、本作はその部分のほとんどを、フィルムに納めるために大胆にカットしてしまったに違いない。でなければ、こんな薄っぺらい感動押し付けストーリーを、手離しに絶賛するはずがない。

 そもそも、人類がゴミを垂れ流し、空気と水を汚し、地球を蝕む寄生虫そのものではないかー!!ってのはまあ分かるとして、その事と寄生生物に、一体何の関係が?あの寄生生物が、神の齎した人間を淘汰するための使者とでも?ただテメェらは、人間に寄生して食ってるだけで、そんな御託なんぞ全て後付けだろうと。
 で、人間側としても、そういう連中の声を聞いたところで、何を学び、何を得て、何が変わったのか。自然破壊をやめたか、ゴミを出さないシステムを考えたか、それとも悪者だからみんなで滅びましょうとなったか。
 例えばゴミにしろ、あるいは原発にしろ、我々が豊かな生活を送る上で避けて通れない必然の問題ならば、あんな得体の知れない生き物に説教される前に「人間の問題は人間で片付ける。テメェらは引っ込んでやがれ」ぐらいのところまで何故持っていけないのか。結局、ストーリー的にも、キャラクター的にも、この二つがまったくと言っていいほど噛み合わず、勝手に説教くさい単語を並べたいだけ並べただけで、それ以上の答えも問いかけも何も考えず、自己満足の悦に浸ってるようにしか見えなかった。

 演出面に関して言えば、いつもの全自動感動エピぶっ込みマッスィーンぶりもさる事ながら、感情をほとんど表に出さない寄生生物と、泣いたり喚いたりキレたりする普通の人間達との対比がお世辞にも上手くなく、まったくコントラストとして機能していないばかりか、全てが作り物めいた機械的でのっぺりした感じになっていたのもマイナスポイント。
 田宮と赤ちゃん、またはクライマックスのミギーの件等も、それまでの少しずつ積み重ねてきた布石を、ここぞという場面で一気に出すのならまだしも、そういった点をさらっと流して、突然のようにポンと泣き要素を引っ張ってくる。言うならば、建築ではなくツギハギ、パッチワーク。あれでは、誰がどのキャラクターを演じていても、さほど違いはない。そこへ来て、「悪魔というヤツに一番近いのは人間のようだぞ」「あまり我々をいじめるな」なんて言われても、もはや失笑もできない。

 前にも書いた気もするが、この監督は「感動」というモノをファッションのように捉えている傾向がある。不特定多数のユーザーが喜びそうな最大公約数を切り貼りし、一本の映画に観えるように仕立てている感覚。
 きっと、それも一つの才能であり、彼なりに苦労して辿り着いたスタイルなのだろうから、あえて否定はしない。世に出すたびにそこそこヒットしている以上、これを観て喜ぶ人もいるのだろう。しかし、良い例えではないかもしれないが、どうにも悪い意味で安定定着してしまっているこの感覚は、ファーストフードのように新作が出ても二度三度と食いたいとは思わない、食傷気味のマンネリ観すら覚える。一映画ファンからすると、これほど面白みに欠けるモノもない。

 おそらく思いつく限り、もっとも食い合わせの悪い作品と監督が出遭って生まれた、一見よく出来ているようで、その実ジェンガのごとく地に足が着いてない、グラッグラな作品。コレを観て「感動したー」「考えさせられるー」なんて喜んでいる人もいると察し、それはそれで幸せなのだろうが、念のため、今アンタがやってるのは「考える」ではなく「考えてるふり」だからね、そんな程度で賢くなったつもりになってんじゃねぇぞと、釘を刺しておく。


 うんまあ、またいろんな連中からアレコレ言われるんだろうけど、ウソつくよかマシだしね。とりあえず、今回はこの辺で。

 ところで、最後のあの殺人犯どこに消えたの?

 ☆☆★★★+

 作品として、というより映画としてつまらない。橋本愛ファイナルフュージョンに免じて、オマケの星2つプラス!!