「劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス」感想


 ムーミンシリーズの生みの親である作家トーベ・ヤンソン生誕100周年を記念して、母国フィンランドで初めて製作された長編劇場アニメーション作品。

 お馴染みムーミン一家が、小さなボートでムーミンを飛び出し、南の海まで旅行に行く様子を描いた本作。そもそも妖精である彼らが外の世界に飛び出して大丈夫なのか?という心配はよそに、案の定そのフリーダムでアナーキーな浮世離れっぷりで、南の海のリゾート地をてんやわんやの大混乱に陥れるという、お約束なストーリー。しかもこれで、ギャグアニメではないのが、また恐ろしいところ。

 田舎で常にマイペースでふんわり生活している彼らと、発展した都市社会の中で生きる人々とのギャップを描きたかった事は理解できるとはいえ、金という概念でさえあるのかどうかあやふやな一家、特にムーミンママの常軌を逸した言動には、計算を越えた凄みすら感じられる。

 付け加えると、ムーミンのガールフレンド・フローレンが、ルーレットで勝った金で、全盛期の「サブラ」かよ!とツッコみたくなるような極小ビキニを購入した挙句、「何も着てないみたいじゃないか」と明らかに全裸のムーミンに窘められるというシュールすぎる光景は、ヘタなコントの数倍の破壊力で、実際、会場のあちこちから「プッ」と噴出す声が聞こえてきた。

 まあしかし、本当はそういうつもりで作っているのではない事は、重々承知なのだが、こうもハイレベルな天然をかまされると、小生のような歪んだオッサンは、そういう視点で捉えてしまう。とはいえ、きっとまだ世間に毒されていない子供達や、純粋なムーミンファンの人達にとっては、まったく違うものに見えるのだろうと察する。
 この世界観を享受でき、尚且つ穿ったモノの見方をしない人なら、単純に楽しめるかと。


 さて、これ以上書くと、またいろんなところからクレーム来そうなので、今回はこの辺で。断っておきますが、本当に変な映画ではありません。至極全うなアニメーション作品です。悪しからず。


 ☆☆☆★★

 つーかコレ、バカンス…かなぁ?元バカルディは出てたけど(エー)。星3つ!!