「ジョーカー・ゲーム」感想


 柳広司原作の短編ミステリー小説を、SR サイタマノラッパー入江悠監督妖怪人間ベム亀梨和也主演で映画化。

 悪くはない、とは思う。ストーリー、出演者の演技を含め、いい物が揃っていた、とも思う。が、しかし、亀梨くんKAT-TUNの熱狂的ファンには悪いが、それらを活かしきれていない、非常に残念な出来だったと言わざるを得ない。

 ジェームス・ボンドに代表されるように、任務の障害は躊躇なく皆殺しが常であったこの手のスパイものにあって、いついかなる時も殺さず、自らが生き残る事を優先させるというD機関の方針は、意外ではあるがなかなか面白く、数々のスパイテクニックと、それを応用した諜報活動、そして暗号に関する決まり等、評価できる点は多々あった。

 亀梨くん演じる嘉藤(仮名)のパーフェクトっぷりも、ややチート的ではあるが許容範囲内。そんな彼が、深キョン演じる謎の女のボインボインにあっさり誑かされちゃう点も、まあ彼の人間くさい部分として大目に見よう。

 が、それらに対し、絵の撮り方が則していない、あるいは追いついていない印象を受ける。誤解を恐れず、違う言い方をするなら、「ここでこんなポーズ決めたらカッコいいだろうな」「ここでカッコいい台詞を決めときたいな」といったいちいちの言動が、あまりに格好を付けすぎているように感じられた。
 もちろん、亀梨くんが何をやっても格好いいのは論を俟たないところだが、そういう事ではなく、強いて言うならエレガントさ。あるいはスタイリッシュさ。まあ、どちらも小生には1ミリも備わっていないものだが(笑)、あくまでさりげない日常の仕草や態度、道具の使い方に滲み出る、男の色気とでも言おうか。亀梨くん個人ではなく、本作全体に対し、そういったものがより自然に表現できていたなら、もしかしたら大化けしていたかもしれない。

 また、上記したとおりストーリーそのものは悪くないものの、ところどころにご都合くさい展開をはさむのは、まったくいただけない。特にクライマックスにかけての一連のシーンは、正直ナンジャソラのオンパレードで、それまで何だかんだで保っていた緊張感が、一気に興醒めしてしまった。
 それこそ作中の早着替えのように、うまくやればある程度のハッタリは許される場合もあるとはいえ、これはさすがに雑すぎ。1の嘘は99の真実の上に成り立つという事を、いい加減分かっていただきたい。


 これは完全に個人的な意見だが、本作のライター(あえて名前は伏せる)は、正直映画の脚本に向いていないと察する。どうも彼は、2時間前後の尺の中に、きっちりとした起承転結を組み込む事がヘタ…というより、ほぼ出来ないに近いらしい。
 聞けば、実写版進撃の巨人も彼が書くそうだが、悪い事は言わないから今からでも、アニメ版と同じく小林靖子ニャンにでも代わってもらった方がいい。はっきり言うが、顔じゃない。


 さておき。変にハリウッドに追いつけ追い越せを狙ったのか、方向性を少々間違えてる感じ。日本映画には日本映画なりの戦い方があるのだから、そっちに金と労力を注ぎ込むべきなのではないかと、改めて思ってしまった。

 まあ、それなりによく頑張ったで賞、という事で。


 ☆☆☆★★

 でも一番気に入らないのは、鞭で打たれて拷問されてる深キョンのオッパイがポロリしなかった事(以下略)、星3つ!!