「マエストロ!」感想


 漫画アクション双葉社)で連載されたさそうあきら原作の漫画を、毎日かあさん小林聖太郎監督侍戦隊シンケンジャー松坂桃李主演で映画化。
 スポンサーの倒産で解散した名門オーケストラの団員達が、謎の指揮者によって再び集められ、対立しながら演奏会を目指す。

 演奏する場を失くした団員達が、いかにも怪しい風貌の天才指揮者の、横暴ともいえる指導と下ネタに辟易しつつも、最終的に一つの目標に向かって奮起するという、少年漫画さながらのフォーマットはなかなか面白く、団員それぞれが抱えた事情、悩みなどをグランドホテル形式で汲み取り、演奏の完成度と正比例して観せる手法もグッド。

 見た目はただの大工か電気修理工ながら、何故か音楽家としての説得力を生み出している西田敏行はもちろん、本作のために一年近くヴァイオリンの特訓をしてきたという松坂桃李くんをはじめ、演者達がみなしっかりと「オーケストラ団員」に見える絵作りをしている点も高評価。中には、本当に楽器を演奏できる方もいらっしゃるが(例えば作中でホルンを担当した嶋田久作は、俳優になる前はキーボード奏者だったそうな)、それでも不慣れな楽器を様になるように扱うには、相当苦労されたに違いない。
 実際の演奏はどうだったのかはともかく、少なくとも「お前、ホントは演奏できんやろ」と失笑したくなるような人は、一人もいなかったと察する。

 それだけに、クライマックスの演奏会のシーンは、もう少し尺を使って丁寧にやっていただきたかったところ。特に会の二日目、演奏中に松坂くん演じる香坂の心中が挿入されるが、若干蛇足的になっているのは、何とも残念。
 どうせなら、曲の各パートにあわせて、それまで色々あった団員一人一人にフォーカスしていった方が良いと思うのだが…。

 また、上記したとおりストーリー自体は決して悪くないのだが、一部に不明瞭な点、観客の想像力で補完しなければならないような部分がいくつかあり、煮詰めが足りない印象を受けてしまった。そこを自分なりに解釈するのが、映画の面白さといえばそうなのだが、例えるなら漫画のページの何枚かが消えているような感じ。何とか物語としては通るものの、そういやあのシーンってどうなってんの?あれって本当に必要だったか?と、後々になってボンヤリ考えてしまった。


 監督が上岡龍太郎のご子息のせいか、やたら関西系の芸人が出演していたが、その辺はさしたる問題でもないし、別に悪い事でもないのでスルーしよう(テント師匠がヤクザ役というのはどうか思ったが…)。
 作中で披露される音楽の知識も含め、一度オーケストラ経験者にご意見を伺いたい。とはいえ、割といい作品。

 はい、他に書くこともないんで、今回はこの辺で。


 ☆☆☆★★+

 ♪ンジャジャジャジャーーン!!星3つプラス!!