「エクソダス:神と王」感想


 グラディエーターリドリー・スコット監督ダークナイト」シリーズクリスチャン・ベール主演。旧約聖書出エジプト記を基に、奴隷として扱われていたヘブライ人(ユダヤ人)達を連れてエジプトを脱出したモーゼの伝説を映画化。

 リドリー・スコットお得意の、超壮大な歴史スペクタクル巨編と思わせといて、実質は物凄い大掛かりなディザスタームービーといった具合。宗教や民族の問題で、世界情勢がピリピリしているこの時期に、よくもまあこんな作品をブッこんで来たなーと思う半面、絵だけを観る分には、それなりに面白かった。

 300年以上もの間、ヘブライ人を虐げてきたエジプトに降り注ぐ、巨大な雹、雷、疫病、カエルとイナゴの大群といった異常気象の数々は、エゲつないほどの臨場感で、同時に自然(神)を前にした人間を無力さを、雄弁に物語っている。

 そんな神の無慈悲さに憤りながらも、ヘブライ人を救うために、自ら先導者となって困難に立ち向かおうと決意するモーゼ演じるクリスチャン(すごくおかしな文章のような気もするが…)はもとより、あくまでエジプトを統べる王として振舞いながら、自身の無能さと求心力のなさに悩み、心を蝕まれていくファラオ・ラムセス演じるジョエル・エドガートンとの対比も良く、それがエジプト全体を俯瞰する視点と、個々人に降りた視点、双方を獲得する事にも役立っていると感じた。

 が、残念な事にこの絵に対して物語が弱く、あまり抑揚のない地味な内容に見えてしまったのは、非常に痛い。原作(?)が今から何百年も前に書かれたモノとはいえ、正直グラディエーターベン・ハーを2、3倍に希釈したような印象。まだ推敲の余地があったのではないか、ひょっとしてセットとエキストラに金をかけすぎて、脚本まで充分に手が回らなかったのではないかと、勝手に邪推してしまった。

 例えるなら、超豪華な具が山盛りトッピングされているも、肝心の麺とスープは平々凡々としたラーメンといった感じ。2時間半も尺を使い、観終わった結論が「神、マジ最低だな」という、某ハピネスチャージプリキュア!と同じような感想というのは、何ともモッタイナイ。

 もう一つ。この手の歴史もの、特に聖書や宗教を扱った作品にはありがちな事だが、モーゼの常人には理解しがたい突飛の行動や、ヘブライ人達の描写の仕方等、いろんな所からクレームが来ていないのだろうか。聞くところによると、ご当地エジプトでは「史実と異なる」として上映を中止したそうで、地球上で一番デリケートな問題であるがゆえに、もう少し慎重に事を運ぶべきだったのではと、今さらながら苦言を呈してみる。

 とはいえ、こういった古代ロマン的な作品は割と好きなので、めげずにどんどん製作していただきたい。

 ☆☆☆★★+

 次回作は、海が割れる繋がりで「珍島物語」の映画化をゼヒ(ムリ)、星3つプラス!!