「西遊記〜はじまりのはじまり〜」感想


 6年ぶりとなる少林サッカーチャウ・シンチー監督最新作は、中国の伝奇小説西遊記をモチーフにした冒険アクション。若き妖怪ハンター玄奘(のちの三蔵法師)が、孫悟空ら妖怪を従え、天竺へと旅立つまでの前日譚を描く。

 ミラクル7号以来となる新作、しかも日本でも馴染み深い西遊記モチーフと聞いて、公開前から非常に楽しみにしていた本作。が、はっきり言ってこれが全然面白くない。各国のいろんなサブカルの影響を受けまくった結果、本来の良さが完全に損なわれてしまったという具合で、心底ガックリ。

 チャウ・シンチーお得意のエゲツないギャグは終始滑り倒しの上、テンポも最悪。加えて、中盤からクライマックスにかけてのイノシシ退治のようなムダなエピソードも多く、物語上の必然性はともかく、構成的に必要だったかと大いに疑問に残る形に。

 特に、妖怪ハンターと、その一連のやりとりは、ただひたすらに冗長で退屈なばかり。一応、本作のキーとなるキャラクターではあるにせよ、他にやりようはなかったのか、別にこのアイデアでなくてもよかったんじゃないか、ひょっとして女優のスー・チーを何でもいいから使いたかっただけなんじゃないかと、妙な勘ぐりすら覚えてしまった。

 象形拳使いや足のデカイ爺さんといったハンター連中も、孫悟空の引き立て役にしてはインパクトが弱く、また、過去作で美人女優をアバタ顔にしたり丸坊主にしたり、はたまた男女逆に演じさせたり、散々好き勝手やってきた監督にしてはぶっちゃけ遊び心に欠ける。奴らこそ、ムリに登場させる必要がなかったのでは?

 そもそも、わらべ歌と大日如来に一体何の関係があったのか。小生が存じ上げないだけで、歴史的な繋がりでもあるのかもしれないが、あれではご都合主義以前の問題。お供の妖怪3人組にしても、贖罪のためと言われればそう思えるものの、その掘り下げが恐ろしく浅いため、ラストの急展開を含めて、観ているこちらは完全にキング・クリムゾン状態。
 監督としてはエンドロール手前、「Gメン’75」のテーマをバックに三蔵法師達が横一列に並んで歩くあの絵が撮りたいがために、こんな内容にしたと察するが、せめて要点だけはしっかりと押さえていただきたかったところ。正直これでは、週刊少年ジャンプに連載されても、10週ももたないと断ずる。


 もう一つ付け加えるなら、ウリの一つであったと思しき残酷描写も、某「ナントカの言うとおり」「ナントカが斬る」同様、使い方を心得ていない印象を受けた。そうする事によって得られる効果を推算できないなら、作品の価値を著しく下げる危険性を伴うリスクを払ってまで、気軽に使用するべきではない。


 タイトルを見る限り、製作者側は本作をこれから何年も続くロングシリーズの第一弾と考えているのかもしれないが、ツカミとしては失敗と言わざるを得ない出来。次もこの調子なら、そのうち日本での同監督の評価は一発屋扱いになる可能性もなきにしも(実際は違うよ。本国では大ヒット作連発してる凄い人なんだよ!)。まあ、そうならない事を切に祈る。

 とりあえず今回はこんな感じで。

 ☆☆★★★

 とんでもねー!!ぐらい肩すかし。星2つ!!