「インターステラー」感想


 ダークナイトシリーズのクリストファー・ノーラン監督ダラス・バイヤーズクラブマシュー・マコノヒー主演。異常気象と植物の枯死により、人類滅亡の危機に瀕した近未来、地球に代わる生命が移住可能な星を探すため、宇宙へと旅立つ宇宙飛行士達の姿を描くSF巨編。

 数年ぶりに、本物の「ハリウッド超大作」を観たという気分。これから制作される多くのSF作品に、間違いなく多大な影響を及ぼすであろうと確信させる、映画界の歴史上重要な意味を持つ一本と評する。

 理論物理学キップ・ソーン教授監修による、相対性理論ブラックホールをはじめとした化学考証の正確さもさる事ながら(いや、実際には分からないけど 笑)、それら数々の科学理論をあくまでエンターテイメント作品として難解になりすぎないよう、うまくストーリーに組み込んでいる点がまずグッド。否、グッドを通り越してグレイト。
 特に、最初に辿り着いた星での一連のシーンは、人間そのものの脆弱さと矮小さ、同時に1秒も一年もさほど変わらない、比べようもないほどの宇宙の広大さと、とてつもなく無慈悲な残酷さを、圧倒的なスケールで描き切っている。

 そんな神にも等しい宇宙の法則を相手にしながら、愛する家族を守るため、極めてゼロに近い可能性に全てを賭けるマシュー・マコノヒー演じるクーパーと、地球に残した彼の娘、そして彼らを取り巻く人々をきっちりと掘り下げ、集束させる、質の高い人間ドラマに仕上げている点も、非常にニクい。
 究極的に、本作はこの親子のドラマと言っても過言ではないのだが、いわゆる厨二病患者にありがちな、「俺ってこんな凄い設定考えちゃうんだぜ、クレバーだろう?」臭を漂わせる事もなく、物語とは何を見せるものか、登場人物に何をさせるものなのかを、十全に理解している証左といえる。
 個人的には、クーパー達をサポートする人工知能ロボットTARSの異質なデザインと、ムダにウィットに富んだキャラクターが、暗鬱で絶望的な状況を、いい意味で緩和するポジションとして効果的に機能していると感じた。
 中盤、何の予告も前触れもなく「えっ、何でこんな役で出てくるの?」と誰もが度肝抜かれたであろう某大物俳優も、同じくいい仕事。パンフにも紹介されていないそうなので、未見の方は前情報なしで鑑賞する事をオススメする。ビックリしすぎて、一瞬誰だか分からなくなる事ウケアイ(笑)。

 これだけの映像美、特に各惑星の様々な表情を見せながら、極力CGが使われていないというのも、実に驚愕。聞けば、ノーラン監督自身、大のCG嫌いだそうだが、アレとかコレとかどうやって撮ってのか、是非一度お伺いしてみたいところ。何もデジタルは全部ダメ、アナログ万歳を謳うつもりはないが、人間の発想力の凄さというヤツを、改めて見せつけられた。

 科学とオカルト、愛情と憎しみ、希望と絶望、それらを3時間弱のフィルムにまとめ上げ、一級の、否、超弩級のSFヒューマンエンターテイメント作品へと昇華させた、まさに至高の傑作。欠点がまったくないとは言わないが、間違いなく今人類が制作できる、最高にして最良の冒険科学アドベンチャーと断じる。
 高卒低所得の脳みそでは、これが限界なので、とにかく気になる人は今すぐ映画館へ。将来、「あの作品なら、公開当時映画館で観たけどね(ドヤッ)」と自慢できる事必至。

 ☆☆☆☆★++

 近い将来、21世紀三大SF映画の一本として、「ゼロ・グラビティ」と並び賞される事確実。残り一本は知らないけど(エー)。星4つプラスプラス!!