「くるみ割り人形」感想


 1979年、チャイコフスキー作曲のバレエ音楽でも知られる、E.T.A.ホフマン原作の童話を、サンリオ人形アニメーションで映画化。ハロー・キティ生誕40周年を記念し、デジタルスキャニングと再編集・映像加工、キャストとスタッフを一新して再上映。

 当たり前のようだが、「よく動くなー」というのが一番の印象(笑)。人形たちを一体一体、微妙にポーズを変えながらの撮影のため、一日平均3秒ほどしか撮れないという、まさに途方のない作業の積み重ねで実現した本作。キャメラをパンさせながら、ほんの少し手を動かす、あるいは首をかしげるといった、些細な挙動までしっかりと再現する熱の入れようで、もちろん、意図して動かしていないと思しき構図も多々あるものの、それすらも計算された「芝居」と演出になっている点が素晴らしい。
 人間が実際に動くのなら、何テイクか撮っておいて、一番いいのを使う、なんて事もできるだろうが、この場合はどうしたんだろうか。後からいらないシーンをばっさりカット、というのも当然難しいはずだから、やはり最初に脚本と絵コンテをきっちり決めておいて、可能な限りそれに忠実に撮ったとしか思えない。鑑賞中、ずっとそんな事ばかり考えていた(笑)。

 内容的には、原作どおり(いや、読んだ事はないけど)キラッキラの御伽噺然とした、愛と勇気と多分の教訓を含んだ児童向け作品で、これ以上ないってぐらいの分かり易さ。まあ、古典童話にどうこう言っても詮方ない事なのだが、正直、小生のようなオッサン目線にはややゆるめ。
 実際、小生の後ろに座っていた子連れの親御さんは、途中から二人揃ってイビキかいて爆睡していたので、その意味で期待はあんまりしない方がいいかも。

 個人的には、結局ドロッセルマイヤーおじさんは何者だったのか、例のドブネズミじじぃ(名前失念)とは何の関係もなかったのか、クララマリー姫フリッツフランツがそっくりだったのは何故?等、いろいろ腑に落ちない点が多く、ついでにあの最低女に何の制裁もなかったのが、どうも納得行かなかった。

 有村架純松坂桃李くんといった出演陣は、声優経験者が多数参加したためか、思ったより良好。特に、マウゼリンクス夫人演じる広末涼子は、最初誰だか気がつかなかったものの、意外とキャラに合っていて良かった。

 まあ要するに。良いところと悪いところ半々ながら、昨今のCGアニメにはない味わいがあるので、気になる人は観といて損はないかも。ただ、35年前の映像なので少々観にくい部分、某イヌカレー的な不気味に見える部分もあるので、その点注意されたし(エー)。


 ☆☆☆★★

 ところで、作中曲がボカロっぽかったのはナンデ?星3つ!!

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