「ジャージー・ボーイズ」感想


 60年代、世界中で人気を博した音楽グループフォー・シーズンズの結成から解散までを脚色、トニー賞を受賞したジュークボックス・ミュージカルを、名匠クリント・イーストウッド監督が映画化。

 はっきり言って上手い、上手すぎる。御年84歳とは思えない、溌剌さとバイタリティに溢れながら、しかし名監督として、そして名俳優として長年ハリウッドに席巻してきた匠の技がキラリ☆と光る、憎たらしいほどの上手さ(笑)。その圧倒的手腕と情熱に、ただただ脱帽するしかない。

 ジョン・ロイド・ヤング演じるフランキー・ヴァリ(本作の製作総指揮にも参加)と、彼の天性の歌の才能に惚れ込み、一緒にバンドを組む事になるトミー・デヴィートボブ・ゴーディオニック・マッシの4人を中心とした、フォー・シーズンズ結成秘話と、ヒット曲と栄光の影に隠された苦悩と挫折を描いた本作。華々しい芸能界とは裏腹の、メンバーそれぞれの人間性、普通の生活にフォーカスし、彼らの当たり前の群像を捉えながら、ゆえにともすれば退屈になりかねない展開を、ナレーション代わりに登場人物が観客(キャメラ側)に向かって話しかけるといった、ユーモアとハイセンスな演出の数々で、見応えのあるモノに仕上げている。

 また、作中に使用されるフォー・シーズンズが素晴らしいのはもちろん、甘く美しいフランキーの高音ボイスと、メンバーが奏でるメロディとハーモニーが、トラブル続きで決して順風満帆とは言い難いバンド生活と綺麗に重なり、見事なコントラストを生み出している点にも注目。
 単なる劇中曲の枠を越え、これほどまでに自然に、且つ大胆に物語へと組み込めるのは、さすが自ら作曲も手がける監督ならではといったところか。

 恥ずかしながら小生自身、実は同グループについてまったく無知であり、かの名曲「君の瞳に恋してる」(原題:Can't Take My Eyes Off You)も、ずっとボーイズ・タウン・ギャングが歌うダンサブル・ナンバーがオリジナルだと思っていた。まして作曲者の一人が、ザ・ロイヤル・ティーンズ「ショート・ショーツタモリ倶楽部のOP曲)と同一人物だったとは。
 月並な表現だが、当時を知る人にとっては懐かしく、我々のような知らない世代には新たな発見と感動を与えてくれる、そんな作品だと評したい。

 まあとにかく、当ブログの存在意義を自ら否定するような言い方だが、アレコレ理屈や駄文を並べるより、この高揚感と躍動感は、実際にスクリーンで体験していただきたい。特に、当時を忠実に再現したと思われる美術と、ラストのミュージカルシーンは必見!!

 恐ろしく短い感想になってしまったが、超オススメです。

 ☆☆☆☆★

 アメリカ政府は世界中の医療機関に招集をかけて、同監督をiPS細胞による不老不死措置を施すべき!(ムリ) 星4つ!!