「プロミスト・ランド」感想


 「ミルク」ガス・ヴァン・サント監督ボーン・アイデンティティーマット・デイモン主演。エネルギー会社のエリート社員が、とある田舎町の天然ガス掘削権を巡るトラブルを通じ、自分自身を向き合う社会派ストーリー。

 「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のコンビが再びタッグを組んだ事でも注目を集めた本作。石油に代わる次世代エネルギーの問題を軸にしながら、地方の財政難や、そこに生まれ育った者の想い、そして一人の人間としての良心に、深く切り込んだ内容は非常に好印象。
 だがそれだけに、どこを主軸に置くかで、捉え方が大きく変わってしまう、ある意味もったいない出来と言える。

 いきなりネタバレみたいな事を書いてしまうが、つまるところ、本作は先日感想を書いた「映画ハピネスチャージプリキュア!と同様、どうしようもなさをどう受け容れるか、あるいはどう抗っていくかという物語と察する。
 大した産業もなく、ただ廃れるままに朽ちていくのを待つばかりだった破綻寸前の田舎町に、突如として降って湧いた天然ガス採掘の話し。確かにプラントを作れば、土地の賃貸料だけで街は一気に潤うものの、土壌汚染などの問題も山積み。果たして、先祖代々住み慣れた土地を汚す覚悟で豊かさを手に入れるか、それとも街と運命をともにするか。

 マット・デイモン演じる大手エネルギー会社のエリート社員もまた、環境保護団体の嫌がらせをもろともせず、これが街を救う唯一の方法だ、ローンも学費も天然ガスでぶっ飛ばせと、必死に町民を説得。しかし結局は、自分自身も会社の利益を上げるためのコマに過ぎないと思い知らされ、ある決断に至る。
 物語は、彼のその「決断」によって幕を下ろすのだが、これを自己満足、または問題からの逃避と考える人も少なくあるまい。彼の行動によって、何かが大きく変化するわけでもなく、もしかしたら、より多くの混乱を招いただけかもしれない。

 結局、本作がやりたかった事とは、会社や団体の意思ではなく、誰かの思惑に左右される事なく、一個人として何が最善か、どう動くのが人としてもっとも誇らしいのかを、問うたに違いあるまい。彼が終始履き続ける、祖父の代から受け継がれているブーツは、例え古くなってボロボロになっても、守らなければならない矜持の象徴とも言える。
 が、それを踏まえた上でも、やはり彼が今までやってきた事に対する「責任」について、スルーされているような印象を受けてしまう。いや、実際には彼なりの方法で果たしているのだが、それを正しく汲み取れるのは、意外と難しいのではと思えた。
 上記したとおり、どうする事もできない問題ならば、ジッと堪えるか、とりあえずジタバタしてみるかしかなく、それだけに、具体案を形にするのは容易ではない。ために、この結末が本作において限りなくベターであり、その意味では実はよくまとまっているのだが、できればもう少し、分かり易さというか、別の着地点を用意していただきたかったところ。


 しかし、いつもながらマット・デイモンは不思議な俳優だと思う。既に40を過ぎたいいオッサンにも関わらず、どことなくいい意味での「青少年感」が残っているせいか、何をやっても憎めない。おそらく、彼がアンドレイ・チカチーロのような凶悪殺人鬼を演じても、なんかいい人に見えてしまうに違いない(笑)。
 軽いアメリカンジョークまじりの会話劇も、なかなか小気味よくてグッド。正直、マット主演でなければ、本作はここまで絵が持たなかったと思われる。

 とまあ、例のよってよく分からん感想になってしまったが、今回はこの辺で。


 ☆☆☆★★

 ところで、アメリカ人ってMT車苦手なの?何度か、そんなヤツを見たような…。星3つ!!