「トランセンデンス」感想


 ダークナイト」シリーズインセプションで撮影監督を務めたウォーリー・フィスター監督デビュー作は、量子コンピューターに意識をアップロードした天才科学者と、そこから起こる世界の危機を描くSFスリラー。

 クリストファー・ノーラン作品を多く手がけた監督だけに、絵と構図はものすごくキレイ。とはいえ、セールスポイントはほぼそこだけ。あとは一部を除いて、おおよそ思ったとおりに事件が起こり、おおよそ思ったとおりに事が運び、おおよそ思ったとおりにストーリーが展開される、良くも悪くも極々普通の内容。

 だいたい、人間の意識をコンピューターに移植(複製?)するなんてアイデア、斬新なようで既に手塚治虫先生日本サンライズが半世紀近く前からやってらっしゃる(はず)わけで、その意味での目新しさは特になし。
 加えて、人間と機械が融合→なぜか暴走→なぜか周囲の人もゾンビ化→あなたは変わってしまったわ!で破壊→最後に人間の部分が垣間見え、結局は愛だよね!エンドも、この手の作品定番の超あるあるコンボと言わざるを得ず、後述する一捻りと、いきすぎたテクノロジーの脅威に対する警鐘とやらを含めても、先進的な映像と合致しない、どっかで観た事あるようなないような観が拭えなかった。

 大時代から描かれてきた、それこそドラえもんの秘密道具に代表される未来の便利アイテムを、ナノマシンで多少リアリティのあるモノにしたのは評価できるが、猫も杓子も人間も太陽光発電ナノマシンでホイホイでは、あまりに安直すぎる。あれでは魔法と何ら変わらん。車が突然ロボットに変形する方が、よほどリアリティがあるというもの。
 まして事の発端であるテロリストどもとCIAと米軍が手を組み、世界の脅威たるその量子コンピューターを破壊しようとか、もはや何がなんだか。少々ネタバレになるが、結局テロリストどもにこれといってお咎めもない上に、いつの間にか連中の思う壺に事が運んでいるというナンジャソラなクライマックスに、ただただ唖然。
 念のため確認しときたいのだが、この本を書いた人は、結論として何が言いたかったんだろうか。別に全てハッピーエンドじゃなければならないとは言わないが、せめて納得の行く答え、そうでなくともヒントぐらいは用意しといていただきたいところ。

 冒頭に物語の結末を持ってくる演出も、これといって意図が見えず、銅線の下で咲くヒマワリが意味するところもやはり不明。あれは、夫婦の希望が僅かながら残ったという事か?それとも、人類の脅威が完全に去ったわけではないという事か?まさか、このご時勢にネットワークの危険性とか?

 いろんな要素を詰め込みすぎた結果、「超越」どころか逆に凡庸でバランスの悪い作品になってしまったという印象。まるっきりダメダメとは言わないまでも、せめてもう少し違ったアプローチ、例えば肉体がないからこそを愛情表現、あるいは本当は危険もなければ暴走もしてないけど、勝手に脅威を感じた国のお偉いさんからちょっかい出される、みたいな部分が欲しかったところ。何ともモッタイナイ。

 しかし、ここ最近では珍しく素顔で出演のジョニデだが(病人メイクはしていたけど)、彼が特殊メイクしていない作品はそんなに面白くないというジンクスがあるような気がするのは、果たして小生だけか?いや、別に彼が悪いわけではないのだが、どんなに考えてもプラトーン以外思い出せない。
 ファンの方には申し訳ないが、もし彼が素顔で出演している面白い映画をご存知なら、是非ともお教え願いたい。


 ☆☆☆★★−−

 てか最近、何観てもモーガン・フリーマンか国村隼さんが出ているような気がするけど、錯覚?星3つマイナスマイナス!!