「オール・ユー・ニード・イズ・キル」感想


 桜坂洋原作のライトノベルAll You Need Is Killを、ジェイソン・ボーンシリーズのダグ・リーマン監督トム・クルーズ主演で映画化。

 ものすごく簡単に言うなら、ロストプラネットギアーズ・オブ・ウォーといったTPSに、初見殺しのいわゆる死に覚えゲーの要素を加えたような内容。ゲーム・コンピュータ全般に造詣の深い作家の作品だけに、どうでもいいところでいきなり即死、ヤバくなったらとりあえず死んでリセットと、ゲーム好きなら思わず共感、あるいはニヤリとする場面が満載で、それだけでも見応えは充分にあり。
 もしシュガー・ラッシュよろしく、ゲームのキャラクター達が住む世界があったなら、きっと我々が普段プレイしているゲームのキャラクターも、トム・クルーズ演じる主人公のように、「何回同じところで死んでんだよバカ、いい加減パターン覚えろや」とか「もうちょっとこう効率よくできんのかなー、ダメージ食らうのも結構痛いねん」とか思っているに違いないと、アホな事を考えてしまった(笑)。

 また、死んだらそれまでの記憶を持ったまま戦闘前日まで戻されるという、一見して厨二全開のチート設定も、思いのほか無理のない、非常に説得力のあるモノになっており、同時に物語を面白くする重要なギミックとして、きっちり機能している点がグッド。普通に戦っていては絶対に勝てない相手にどう立ち向かうかはもちろん、能力ならではの見せ方や、同じ時間を繰り返すからこそのエピソードもふんだんに盛り込まれており、ドラマ面でも存分に楽しませてくれる。

 肝心の戦闘シーンも迫力満点で、特に後半、スキルアップしたトムさんの無双っぷりは、まさに凄腕ゲーマーの神業プレイのよう。
 個人的に残念なのは、せっかくのパワードスーツと専用ウエポンがあるのだから、最終戦で専用装備の一つも欲しかったのと、もう少しバリエーションが見たかった事。軍の支給品だから仕方がないのかもしれないが、エミリー・ブランド演じるリタ軍曹と、ケツ丸出しのDB以外にも、高火力重視モデルや、白兵戦専用モデルなんかがあってもよかったのでは。
 それから、巨大な敵勢力への対抗策として、超大型パワードスーツの登場も期待していたのだが、それは次回、ギレルモ・デル・トロ監督にお任せしよう(ネェヨ)。

 いつもの殺しても死なない、カッコいいトムさんとは打って変わって、戦いたくないないばかりにひたすら駄々をこね、戦場では悲鳴を挙げながら逃げ惑うという、ヘタレで情けない姿にも注目。とはいえ、中盤以降はしっかりいつものトムさんに戻るので、ファンの方はご安心を(エー)。

 余談だが、一つ疑問。本作の敵である謎の宇宙生物「ギタイ」タタリ神か走るモズクみたいな見た目はともかく、名前からして取り憑いた生物を体内から支配し、姿形そのままにそっくり取って代わるという意味の「擬態」かと思ったのだが、どうやらそういった素振りはなく。原作には、その辺の理由もちゃんと書いてあるのだろうか。…まさか本体に成り代わり、手足となって侵略活動を行う義体とか?


 さておき、オチがちょっと強引じゃね?という向きはあるにせよ、TPS好き、アクション好き、SF好きなら間違いなく楽しめる出来。もちろん、トムさんのファンにもオススメ。超簡単だけど、今回はこんな感じで。


 ☆☆☆★★++

 久々の当日更新、星3つプラスプラス!!