「聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY」感想


 車田正美原作の伝説的コミックを、TIGER & BUNNYさとうけいいち監督の手でフルCG3Dアニメ映画化。

 車田正美 熱血画道40周年」記念作品として、原作でも特に人気の高い「聖域十二宮編」をモチーフにした本作。
 さすがにテレビシリーズで33話分のエピソードと、その前日譚である「ギャラクシーウォーズ編」「暗黒聖闘士編」、さらに「白銀聖闘士編」を93分の尺に押し込むのは無理と判断したのか、星矢たちが修行を終えて日本に帰国→アイオリア登場でフルボッコという、黄金聖闘士もビックリな超光速端折り展開となっている。

 欲を言えば、今流行の3部作にし、第一弾で一輝兄さん率いる暗黒聖闘士、第二弾で白銀聖闘士アイオリア、第三弾で黄金聖闘士教皇と、それぞれ段階を踏んで戦って欲しかったが、次が制作される保障もない業界の現状と、どこに使ったのかおおよそ100億と噂される本作の総制作費を鑑みても、多少ムチャでも一番やりたいエピやっちまおうぜ的な発想になるのは、致し方ない事と察する。

 とはいえ、上記したように映画用と考えるなら、わりかし良い出来であり、確かに、冒頭以外はひたすら黄金聖闘士たちにボコボコにされるばかりだったり、ストーリーもほとんど別物かというぐらい変わっていたり、何故か蠍座のミロにいたっては女体化してたり、一輝兄さんが不憫なくらい噛ませ犬ポジションだったりと、ツッコミどころに事欠かない内容ではあるものの、少年達が幾多の困難を乗り越えて勝利を掴むという、王道的な物語のツボをしっかりと踏襲した、見応えのあるものに仕上がっている。

 最新CG技術を使用した、肝心のアクションシーンも非常に迫力満点で、必殺技のエフェクト表現は長年のファンなら思わず「ウキャーッ!!」と叫びたくなる完成度。個人的には、何故かメガネ男子化されたムウ様クリスタル・ウォールが超お気に入り(笑)。
 また、本作の代名詞ともいえる聖衣(クロス)は、そのデザインもさることながら、状況に合わせて頭部がサークレットからヘルメット、そしてフルフェイスに変化する文句なしのカッコよさ。あれはフィギュア出たら買ってしまうかもしれん。

 妙に人懐っこくてハイテンションの星矢に、いついかなる時も聖衣を脱がないバカ真面目キャラの紫龍(ただし、例のアイツとの対決シーンでは案の定脱ぎます 笑)、クールだけどちょっとお茶目な氷河、相変わらずの平和主義者に女の子好きがプラスされた(?)瞬ちゃん、どう見てもツンデレ純情ヤンキーの一輝兄さんと、いい意味でオリジナルに縛られる事なく、現代っ子ナイズされたキャラクターにも注目。
 中でも沙織さんは、原作の気高いお嬢様キャラとは打って変わって、突然の襲撃でパニックになったり、体重の事を言及されてキレたりと、ごく普通の女子高生然としながら、星矢たちの事を誰よりも慮り、時には黄金聖闘士にさえ啖呵を切る芯の強さと優しさを併せ持つ、オリジナルに勝るとも劣らない女神アテナ像を体現。
 中盤、長かった髪を切りショートボブにまとめた事で、さりげなく差別化を図っている点も好印象。中のももクロの人も思っていたほど悪くなく、「この人のためなら戦える」という説得力の獲得にも成功していてグッド。正直、本作の魅力の半分は、彼女の存在あってこそと断じてしまいたい。

 他にも、若干チャラ男化したシュラや、声もキャラも某カリビアンなパイレーツ調のデスマスク、口ピアスに胸毛ボーンのアイオリアと、見所満載…もとい、原作ファンなら唖然とする部分も多々あるものの、その上でと割り切れるなら、充分に楽しめる内容かと。

 できれば、次の「ハーデス編」もやってほしいが、この制作費を見る限り、難しいか…。もしあるなら、今度こそシャカの出番を増やしてほしいだが、生き残ってるヤツ多いしなぁ…(エー)。


 てか、「天界編」の続きどうなった?なんなら「NEXT DIMENSION 冥王神話でもいいけど。

 ☆☆☆★★+

 ちなみに、本編でオッサン呼ばわりされたアルデバラン、設定上では20歳ですから。まだ20歳ですから!!星3つプラス!!