「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-」感想


 2012年放送、笹本祐一ライトノベルミニスカ宇宙海賊を原作にしたテレビアニメシリーズの劇場版。宇宙時代、私掠免状を受けて合法的に海賊業を営む「弁天丸」の女子高生船長・加藤茉莉香とその仲間達が、謎の少年とともに亜空間の深淵に迫るSFファンタジーアクション。

 人物相関、および基本的な構造はテレビシリーズと同じ。加藤茉莉香を中心とした弁天丸クルーと、白凰女学院ヨット部その他が、降りかかる難題難問に、意外とコアなSF考察を交えつつ、女子高生らしいキャッキャウフフのノリで解決していく、といった内容。
 茉莉香の新コスチューム以外、特に変わった点はないが、元が完成された世界観を持つ作品なので、ヘタな新要素を加えて台無しになるより、いい意味で通常運転を心掛けたのだと勝手に察する。

 この手のテレビシリーズの劇場版の多分にもれず、本編を観ていないと理解しづらい点も多少見受けられるが、本作オリジナルキャラクターにして、もう一人の主人公である少年・無限彼方の視点から観る構図のおかげで、ただ初見の状態で放り込まれるより格段に分かりやすく、また、本編ファンにも客観的に登場人物を見るという、新鮮な印象を齎す事にも成功している。

 亜空間航行だのトランスポンダだの、そのスジの人以外にはさっぱりな単語も、できる限り咀嚼、あるいはビジュアル的に観て理解できるように工夫されている点も高ポイント。惜しむらくは中盤の電子情報戦のシーン、そのビジュアルに頼りすぎたためか、いまいち危機感が伝わってこなかったのは、ちと残念。
 それに付け加えて、今回の敵であるユグドラシル(当たり前だが「鎧武」とは一切関係ない。念のため)側の描写が極端に少なく、結局何がしたかったのか、どの程度の強敵なのか、最後まで掴み切れなかったのは、痛いマイナスポイント。単純に茉莉香彼方の側に徹底してフォーカスした結果なのかもしれないが、せめて能登ちゃん演じるスカーレットと、本物だか偽者だかよく分からなかった大佐殿以外で、これがどれだけヤバい事例なのかを観客に伝える役回りが欲しかったところ。

 とはいえ、あくまでコアユーザーに向けたファンムービーでありながら、一見さんにも優しい出来。驚くようなネタバレ要素もないと思われるので、シリーズ未見の人なら、本作を観てからDVDをレンタルするのもいいかもしれない。やたらと挿入される、坂本浩一監督ばりのJK太ももズームにも注目(最低)。
 しかしここ最近、何のアニメ映画を観ても中川翔子が出てくるような気がするのだが、どういう事なんだろうか。いや、別に嫌っているわけではんばいのだが、彼女を世のアニヲタ全ての代表みたいに思われるのには、やや抵抗が…。


 ☆☆☆★★+

 でも一番の見所は、梨理香さんのセクシーさ加減ね(エー)、星3つプラス!!