「BUDDHA2 手塚治虫のブッダ -終わりなき旅-」感想


 仏教の開祖であるシッダルタ仏陀生涯を描いた、手塚治虫原作コミックの映画化第二弾。

 前作の公開が2011年なので、既にかれこれ3年近く経っている事になる。当時、あまりに薄味で中途半端な出来に「これは次回作が公開される頃には、どんな内容だったか忘れてるんじゃないか?」などと思ったものだが、案の定、今をときめく堺雅人さんの芝居が思いのほかよかった事と、シッダルタの父親役の人の演技が棒読みなんてレベルじゃない酷さだった事以外、キレイさっぱり忘れてしまった(笑)。
 まあ、「豆腐」「鬼神」と並んで、その年のクソアニメ映画ワースト3に堂々と名を連ねるような作品だったし、別に無理して思い出すほどの内容でもないか(エー)。

 で、その点も踏まえた本作は、ようやく物語が動き始めてまともになったかな、といった印象。そこはかとなく、某エルカンターレの人みたいな胡散臭さはあるものの、苦行の果てに悟りを開くシッダルタと、彼に様々な形で関わる人々の苦悩や哀しみを具に描き、生きるとは何か、生命とは何かを、現代にも通じる強いメッセージ性を持って観せてくれたのは、評価に値する。
 漫画の神様・手塚治虫先生の、それも何十年に渡って愛され続けている作品がつまらないはずはないのだが、元々娯楽アニメとするには少々難のある題材だけに、扱いも難しいところと察する。それを老若男女に受け入れやすい形にまで落とし、エンターテイメントに仕上げる手腕は、さすがは天下の東映アニメーションといったところか。

 が、その分オブラートに包みすぎているというべきか、少々キレイに描き過ぎているように思えたのは、正直いただけない。単純にキャラクターデザインの関係なのかもしれないが、例えば、貧困に苦しむ人々や奴隷と、煌びやかな貴族の対比をもっと明確に、それこそキンピカの装飾を纏った貴族の行列のそばに、身体に蛆がわくほど汚れてやせ衰えた人々が寝転がっている、ぐらいの描写はほしかった。
 「アシュラ」などがいい例だが、目を背けたくなるような悲惨な生活を強いられている人々を描くなら、本当に目を背けたくなるような表現をしなければ、説得力は生まれない。シッダルタの苦行のシーンも相当にエグいが、それ以上に「今一番の苦しみに身を晒しているのは誰か。本当に救わなければならないのは誰か」を、より鮮明にビジュアル化するべきだったのでは。

 個人的な事を付け加えると、ルリ王子役の真木よう子の声に、ものすごい違和感を覚えてしまった。すごく座りが悪いというか、どこか本来のキャストではない、代役の人が声を当てているような感覚。無論、本職の声優には遠く及ばないまでも、まったくドヘタではなかったのだが、結局最後の最後まで、あの声に馴染めなかった。
 前作でも思ったが、このシリーズの音響監督は、ちゃんとオーディションなり声合わせなりを行っているのだろうか。本職以外使うな、とは言わないまでも、せめてイメージに合った声を選んでいただくよう、お願い申し上げたい。

 ちなみに、タッタ役のあの大根役者については…、まあいつもの感情込めた棒読みだったなと(笑)。あえて言うなら、水樹奈々の隣に立たされて逆に可哀そうだね、自分から売り込んでいてこの出来ってどうなのかね、ってぐらい。笑い飯は、どこに出てきたのかよく分からんかったので割愛(あとあとウィキで調べたら、最後に出てきたブラフマンとかいう爺さんの役だった。全然気づかんかった)。

 さて、最終章(多分)となる「3」の公開は、はたしていつのなるのやら…。少なくとも、次の冬季オリンピックが開催するぐらいまでには公開していただきたいところ。でないと、前作以上にみんな内容忘れちゃってるから(エーー)。

 ☆☆☆★★

 つーか今さらだけど、この映画のメインターゲットってどこだ?星3つ!!

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