「アフター・アース」感想


 シックス・センスM・ナイト・シャマラン監督、ウィル&ジェイデン・スミス親子主演。伝説の戦士である父とその息子が、人類が去り凶暴・巨大化した動物達の支配する地球で生き残りをかけた戦いに挑むSFサバイバルアクション。

 まったく当たり前の、普通によく出来た父子モノといった印象。偉大な父を越えようと奮闘するも若さゆえに空回る息子と、その才能を認めながら上官として厳しく接する父が、時に衝突し、時に助け合いながら、徐々に絆を深めていくという、おそらく人類が「物語」というものを発明した太古の時代から作られてきたであろう、ド直球&ド定番な内容。
 もちろん、それが悪いわけでは決してなく、むしろ定番だからこその普遍的な良さと安定感があり、息子の成長譚としての側面も含め、最後まで飽きずに鑑賞する事ができた。

 が、それだけに意味不明な点、あるいは蛇足的部分が非常に多く、著しく評価を下げる要因となっているのは、正直いただけない。登場する未来ガジェットの数々が微妙にダサいのはこの際目を瞑るとして、せっかく人類が別の星に移住して1000年後の地球という設定があるにも関わらず、どこぞの異星人が放った「サイン」の使い回しみたいな怪物だの、恐怖を感知して襲ってくるだの、わざわざ乗っけてくる意味が分からない。
 普通に凶暴化したライオンかゴリラか、あるいはビッグフット等UMAの類ではダメだったのだろうか。地球に不時着する理由に関しても、ムリに進入禁止区域などにせず、調査に訪れてみたけどトラブルで未開の地に落っこちちゃいましたテヘペロでもよかった気が。

 また、上記したダサい未来ガジェットにしても、例えば酸素薬の重要性や、様々な形状に変化する棒といったアイテム、さらに言うならレンジャーや敵勢力の戦況など、未使用というより「作った本人しか分からない」設定が多すぎるのもマイナスポイント。ヲタ中学生が書いたバトル漫画じゃあるまいし、おおよそ2時間弱の尺内に収まりきらない、しかも本当に必要かどうかも不明な、それこそ本編より分厚い資料集を読まないと分からないような裏設定、一体誰が喜ぶのかと。
 そもそも、あれだけ技術が発達していながら、応急処置用のツールが簡易スキャナと麻酔だけとは料簡できない。素人意見ながら、大腿骨の複雑骨折及び動脈からの出血ならば、添え木をして患部より上部をきつく縛るか、ギブスのようなもので完全に固定するべきではないのか。現代でさえ緊急用のそうした医療具が存在するというのに、人が自由に惑星間を航行できる時代にそれがないとは、とても考えにくい。

 こう言っては何だが、せっかくのSFだしとりあえず思いついたアイディア片っ端から詰め込んじゃおうぜ的な、安直さすら透けて見えてしまう。それでなくとも、姉の一件その他もろもろ無駄が多いのに、もはや何がなんだか…。

 さらに付け加えると、後半、今まさに噴火している活火山に、それも生身で走って行く勇敢さという名の無謀っぷりもさることながら、火山灰が降り積もっているはずの山頂に、校庭に撒かれてるような砂利がキレイに敷き詰められているオッチョコチョイっぷりにも思わず失笑。念のため書いておくと、火山灰は肺に入ると間違いなく疾患を起こしてくれるステキなヤツなので、防塵マスクと保護具もナシに近づくなど、自殺行為に等しい。
 
 まあ、本作で一番納得いかないのは母親役がジェイダ・ピンケット=スミスではない事だが(笑)、久々にここまでツッコミどころ満載のハリウッド映画を観た。条件は揃っているだけに、何とも惜しい。
 最後に、これはまったく個人的な疑問なのだが、夜間の気温が毎日氷点下を下回る環境で、あんなパイナップルみたいな木が自生できるのだろうか。1000年経って生態系が変わったからと言われればそれまでだが、それにしたってそもそも、いくら環境に順応・適応したとはいえ、1000年そこいらであそこまで動物が巨大化するものなのか?超過酷な状況下で、たまたまデカく生まれ育った種だけが生き残ったとか?佐賀のアリはデカい的な。
 
 その辺の知識に明るい方、もしいらっしゃいましたらご教授願います。
 

 ☆☆☆★★−

 んーでもね、二人の演技はすごくいいんだよ実際。星3つマイナス!!