「リアル〜完全なる首長竜の日〜」感想


 乾緑郎原作(原題「完全なる首長竜の日」、第9回このミステリーがすごい!大賞受賞のSFミステリー小説を、トウキョウソナタ黒澤清監督・脚本、佐藤健×綾瀬はるか主演で映画化。


 昨今の若手俳優でも1、2を争う人気と実力を兼ね備えた、小生自身も個人的に大ファンの二人が揃って主演するという事で、公開前から非常に楽しみにしていた本作。しかし、いざ蓋を開けてみると、想像していたレベルを遥かに下回る、「劣化インセプションあるいは「劣化シャッターアイランドとも言うべき、何とも残念な仕上がり。

 …いや、シャッターアイランドは最初から劣化しt(以下略)。

 さておき。
 この手のミステリーお約束の失敗パターン、「予想を越える」「衝撃のラスト」などの安っぽさ全開の煽り文句で、逆に最大の謎とやらをあらたか予想させてしまうオッチョコチョイっぷりもさる事ながら、その後の展開の取って付けたようなチグハグ加減がまずいただけない。
 例によって詳しくは書けないが、元々自殺をはかって昏睡状態に陥った恋人を救うため、最先端の医療技術「センシング」を使ってその意識の中に入るという内容だったはずなのに、いつのまにか昏睡の原因が首長竜と、過去のトラウマにあるような感じに謎スライド。それまでの経緯を総合すれば、多少なり納得できなくはないものの、最後の方はいつものイイハナシダナーで適当に誤魔化された観アリアリ。
 そもそも、悪いと思ってるなら何故殺人鬼の名前に使う?実のところ、心のどこかで「全部お前の勝手じゃん。お前のせいじゃん」と開き直っていたとしか正直思えない。

 また、「大ファン」と上記しておきながら何だが、その二人がまったく恋人同士に見えないのも痛いマイナスポイント。
 確かに実年齢にして4歳の差、姉さん女房と言われればそれまでだが、同じ画面に並んで写ると、幼馴染というにはかなり無理がある。実際ウィキ情報によると、原作では姉弟という設定で、映画化に際し内容も「70%くらい脚色した」したそうだが、この件も含めて「どうしてこうなった」観がハンパなさすぎる。

 付け加えるなら、その主演二人はもちろん、堀部圭亮中谷美紀さんオダギリジョーといった脇を固める俳優陣も実力派が顔を揃え、それにふさわしいだけの仕事をしているものの、どうにも個々のバランスが噛み合わず、ポテンシャルを生かし切れてない印象を受けた。
 作風に合わせ、あえて淡々とした演技に抑えたとも考えられるが、まるで数々の高級食材を適当にブツ切りにし、煮立った鍋の中へ豪快に叩き込んだような、しかも出来上がったモノは白湯にアジシオと粉末スープを溶いたぐらいの味しかしないという、もはや誰得を通り越してちょっとしたイジメか?と勘ぐりたくなるがっかりキャスティング。
 せっかく、クウガ電王が歴史的邂逅を遂げたというのに、もったいない。あまりにもったいない。


 某雑誌のインタビューで、佐藤健くん自身が本作について「観終わった後、感想に困ったらひとまず僕らの勝ちですね」と語っていたが、果たして小生が今抱いているこの感情は、彼の思い描いていたモノと同じなのだろうか。
 ホラー映画と彷彿とさせるキャメラアングルや、仮想世界と現実世界の演出・撮り分け等、上手いと思わせる部分も多々あるにせよ、全体的に観て感想に困るというより、ただただポカンとするばかりの内容。健くん綾瀬はるかには悪いけど、こういうのはさすがにノーサンキュー。お願いだからもっと仕事選んで!!


 ☆☆☆★★−−

 もういい加減、泣けます雰囲気映画はいいよ。つーか何一つ「リアル」じゃねぇし。星3つマイナスマイナス!!