「カラスの親指」感想


 道尾秀介原作のミステリー小説を、楳図かずお恐怖劇場 絶食」伊藤匡史監督・脚本、テルマエ・ロマエ阿部寛主演で映画化。

 一見、蛇足で無意味に思えるような些細な部分も含めた、大小様々なパーツが、ほとんどムダなく、完全な形で機能していく巧みな構図に加え、それらが見事に繋がっていく後半の展開、及び演出の上手さは実に爽快で見応えアリ。また、本作のクライマックスであるヤクザへの復讐作戦は、お世辞にもイーサン・ハントばりとは言い難い、素人丸出しの危なっかしさが上手く作用し、非常に緊張感溢れるシーンでグッド。

 阿部氏演じる、職人気質だがどこか悪の道に染まりきれないお人好しの詐欺師と、村上ショージ演じる、オッチョコチョイでお調子者の相方、そして石原さとみ能年玲奈演じる姉妹と、小柳友演じるその姉の彼氏(と、猫)。とあるきっかけから同居し、ともに共通の敵であるヤクザに立ち向かう事になる、擬似家族ともいうべきこの5人の、デコボコでドタバタな相関もなかなか面白く、キャラクターバランスも申し分なし。
 特に村上氏は、いつもの関西弁ではなく標準語だった事に多少の違和感を憶えつつも、いい意味での小物観と胡散臭さが絶妙に働き、作品全体をよりよい方向へと引き上げる柱として、十全の仕事ぶりを見せてくれた。もしかしたらこの人は、ギャグさえ言わなければいい芸人なのかもしれない(エー)。多分気のせいだけど(エーー)。

 とはいえ、やはりこの3時間弱という上映時間が、相当なネックとなっているのは否めないところ。確かに、この尺に耐えうるだけのシナリオ力はあり、客を飽きさせない仕掛けは整っているものの、よほどの大作でもない限り、ここで敬遠する人は多いと察する。
 随分とアレな例えだが、リリカルなのはA's」あるいは「アシュラ」といった昨今の良作アニメ映画が、「ヲタクが観るもの」という偏見のためにスルーされているような勿体なさ。そこさえ突破できれば、それに見合うだけのサティスファクションを得られるはずなのに、なんとも惜しい。まったく個人的な見解を言えば、うまく編集すればもう30分は短縮できたように思うが、こればっかりは何とも…。

 
 ついでに、ネタバレギリギリでまったく個人的な疑問を書いてしまうが、そもそも鶴見辰吾演じるヤクザは、あの事件の事を覚えていたのだろうか。おそらく、そこはお客さんのご想像におまかせします、といったところなのだろうが、どうも「どっかで見た事あるけど、コイツ誰だっけ?」みたいな感じに見えたのは、小生だけか?
 それから、姉妹が公園で聞いた銃声のような音。あのあと思いっきりスルーされていたが、結局アレも何だったのかイマイチ不明のまま。彼氏の言う「訓練」の一環なのか。うーん…。


 さておき。上記したとおリ、上映時間さえクリアできれば、誰でも問題なく楽しめる作品、のはず。作中の言葉を借りるなら「うまく行きすぎ」な展開に、正直途中からオチが分かってしまう人も中にはいると察するが、ストーリー自体が非常に魅力的なので、気になりましたら是非ともご鑑賞を。


 ☆☆☆★★++

 てか、一ヶ月近く書かなかったせいで上映終わっちゃってるじゃん…orz もうちょっと早く仕上げんとなー。星3つプラスプラス!!

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