「ガラスの花と壊す世界」感想
2013年「アニメ化大賞 Powered by ポニーキャニオン」にて大賞を受賞した、創作ユニット「Physics Point」の『D.backup(ディー・ドット・バックアップ)』の原案を、「新世界より」の石浜真史監督×A-1 Pictures制作でアニメ映画化。
人類が残した「知識の箱」と呼ばれる仮想世界で、プログラムウィルスと戦う二人の少女(の姿をしたアンチウィルスプログラム)と、そこに突如現れた記憶喪失の少女が出逢い、現実世界の秘密に触れていくという、良くも悪くも厨二的な、あらすじを読んだだけで粗方の展開が予想できてしまうような内容ながら、その前提を分かった上で、何を見せたいか、何がやりたいかを明確に示し、できる限り丁寧に仕上げようとしている点は、好感が持てた。
ただその分、キレイにキッチリ作り込もうとするあまり、いい意味での遊び、例えばアンチウィルス2人に人間らしい感情が芽生える過程等、型に隙間なく当て嵌めたような「固さ」を覚えた。言い換えるなら、レシピどおりの味付け、あるいは楽譜どおりの演奏。
それが決して悪い事ではないし、事実、プロを名乗りながらそれすら満足に熟せていない者も中に入るのだが、客から金を取って出す以上、これぞセールスポイントと呼べる、いわば個性が欲しかったところ。
また逆に、キャラクターバランス、世界観の説明、演出面の部分にはアラ、推敲の余地が目立ち、面白みを半減させてしまっているのは、痛すぎるマイナスポイント。特に中盤、3人で様々な世界、時間を旅して周るシーンは、その後の彼女達の言動、進むべき未来を決める上でも非常に重要な要素であっただけに、謎のPV仕様などにせず、もっと工夫するべきだったのでは。
他にも分かりにくい点、セリフによる情報量で混乱する場面が多く、ほとんどの人は一回観ただけでは理解できないのではと察するが、とはいえ、これを二回以上観たい人も、そうはいないだろうと思われる。聞けば、公式パンフレットにはそういった事に対する諸々の解説・説明が掲載されているそうだが、鑑賞した人全てがパンフを購入するわけではないし、まして作り手の頭の中にしかない設定を、作品そのものに内包できないようでは、物語として破綻していると言わざるを得ない。
67分という短尺に、やりたい事を可能な限り詰め込んだ、その熱意は買わせていただくが、正直なところ、褒められるところは思いの外少ない。しかし、こういったベンチャー的なオリジナル作品が定期的に制作され続ける事は、若い才能の発掘をはじめ、アニメ業界全体の底上げにも繋がるのではと、小生は考える。
胸張って映画館で1800円払って観てくれ、とは言えないが、何か機会があるなら是非鑑賞していただきたい。出来はともかく、応援しておきたい作品。
☆☆☆★★
新年一発目から辛口でスミマセン。星3つ!!
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