「007 スペクター」感想


 アメリカン・ビューティーサム・メンデス監督。1962年公開のドクター・ノオから数えて24作目、ダニエル・クレイグ主演4作目の人気シリーズ最新作。

 一昨年、DVDとBlu−rayで全作視聴。ために「007」シリーズを劇場で鑑賞したのは、本作が初めてだったりする。その上で全くの私見を書かせていただくと、それまでのシリーズは、半世紀以上前にショーン・コネリーが作り上げたジェームズ・ボンド像を、大なり小なり、よく言えば継承、悪く言えば引き摺っていた印象を受けたが、ダニエル・クレイグの代になってようやくそれを解脱、まったく新しい007へと新生できたように思われる。

 無論、それだけショーン・コネリーのはまり役であった事の証明であり、カジノ・ロワイヤルから事実上のリブートとなったからでもあるが、それだけではない。従来までの大胆不敵なスタイリッシュさとミステリアスな雰囲気、しかし美女と酒に目がないお茶目な部分に加え、哀愁にも似た影と危うさを漂わせる、より人間臭いボンドへと進化できたのは、偏にダニエル・クレイグという演者の技量あってだろう。
 
 ロジャー・ムーア降板後、ティモシー・ダルトンが4代目を引き継いだ際も、同じく若々しいギラギラした新ボンド像を確立しようと試みたのではないかと邪推しているが、古くからのファンに受け入れられなかったのか、興行的に振るわず、失敗に終わっている。とはいえその後、5代目ピアーズ・ブロスナンを含め、演じるべきボンドを全て出し切ったからこそ、現在のダニエル版ボンドが完成されたのではと思うと、やはりそれも大事なピースの一つに違いなかったと思いたい。

 余談だが、ティモシー演じるボンドは、原作者イアン・フレミングが描くイメージに当時最も近いと言われ、特にリビング・デイライツは、かの故・ダイアナ妃も絶賛したほど、後年再評価されている。かくいう小生も、お気に入りの一本であると付け加えておく。


 随分と前置きが長くなったが、さておき。前作スカイフォールの後日談にして、カジノ・ロワイヤルから続く一連の集大成とも言える本作。ボンドの宿敵「スペクター」との対決を軸に、いつも通り世界を脅威から救う活躍劇とともに、彼自身の過去の清算にスポットを当てた内容。

 正直ストーリーとしては、私情なのか任務なのか計りかねる点が多く、敵側の行動理念も少々首をかしげる部分が見受けられたが、落しどころとしては悪くない印象。メキシコ市内を派手にぶっ壊したり、MI6の装備を勝手にパクったりと、メチャクチャさ加減もしっかり健在で、そちらも一安心(エー)。
 また、上記したとおりシリーズに一区切り付けるためか、例えばロシアより愛をこめてを彷彿とされる列車の旅や、ユア・アイズ・オンリーを思わせるヘリコプターでの攻防等、ファンからニヤリとしてしまう過去シリーズのオマージュも満載。個人的には、冒頭から数分のワンカットが、非常にスピーディー且つスリリングでよかった。

 若干ネタバレになるが、あのラストを観る限り、本シリーズはここで打ち止めか、次回作は冒頭から専業主夫になったボンドがオッパイマシンガンで襲撃されるかしかないように思うのだが(ハイ、何の事か分からない人は裸の銃を持つ男シリーズを観ようね)、ダニエル曰く「(本作を含め)あと3、4本は出演しないといけない契約になっている」そうなので、おそらく2、3年後には25作目が公開される事だろう。多分。

 まあとにかく、相変わらずよく分からん感想になってしまったけど、今回はこの辺で。

 ☆☆☆★★++

 あと、ボンドカー(?)の一連のシーンは笑った。ボンド、後々009にぶん殴られなかったかな?星3つプラスプラス!!