「ピクセル」感想


 2011年アヌシー国際アニメーション映画祭短編部門を受賞したパトリック・ジャン原作・監督の短編映画を、ハリー・ポッターと賢者の石クリス・コロンバス監督ジャックとジルアダム・サンドラー主演で長編映画化。突如地球に襲来したレトロゲーム型侵略者に、かつての最強ゲーマー達が戦いを挑む。

 これはもう、題材からして好きにならざるを得ない作品(笑)。ドット絵のキャラクターが画面から飛び出して暴れまわるなど、我々8bitゲーム直撃世代なら誰しもが空想した、リアル「ファミコン風雲児」ともいうべき物語(ソウカ?)を、ハリウッドの最新CG技術を駆使して映像化されるのだから、胸ときめかないわけがない。
 米軍基地を破壊するギャラガ、タージマハルを消滅させるアルカノイド、そして街中のありとあらゆるものを食らいながら、ミニクーパーと追いかけっこを繰り広げる巨大パックマン。80年代初頭の、どこか未完成でエネルギッシュなあの時代を象徴する、懐かしきあのゲーム達が実体化する興奮はもちろん、当時の懐古的チープさと現代の洗練されたスタイルが見事に融合した、誰も観たこともない、しかし誰もが観たかったであろうスーパークールな絵の数々に、テンションは最初から最後までクライマックス。正直、それと冒頭のゲーム大会だけで、十分お腹いっぱい(笑)。

 余談だがクライマックス、ワンダーボーイがずっと憧れていたキャラクター・レディ・リサが実体化して現れるシーンは、我々ヲタクにとっては夢のシチュエーションであり、ぶっちゃけ心の底から羨ましいと思った(笑)。
 もし、小生の前にスーパーリアル麻雀PV」遠野みづきが現れたら、そのあと刺されようが警察に通報されようが、躊躇なく全力で抱きしめるし、何ならディープキッスぶちかます(犯罪)。

 主人公がかつてのゲームキッズ、今や冴えない中年になったオッサン達というのも、なかなかニクいチョイス。人生のターニングポイントを迎え、様々な失敗や後悔、挫折を経験した彼らが、本来全くムダに終わるはずだった自分の特技を生かし、再び輝きを取り戻していくその姿は、あの頃を知る同年代へのエールにも思え、同時に傍から見ればどんなにくだらなく映るモノでも、今までの人生にムダなどないと雄弁に訴えているようにも感じられた。

 まあ、あえて不満点を挙げると、ハリウッド映画お得意の、当初反発し合っていたバツ1同士が、最後は幸せなキッスをしてハッピーエンド、あるいは、いかにも怪しいヤツのアホな行動のせいで大ピンチといった定番ネタには、正直軽くウンザリしてしまった。
 また、82年当時のゲームを題材にしているにも関わらず、85年リリースのスーパーマリオや、84年に開発されたテトリスが登場する等、年代的矛盾点もチラホラ。作品の完成度を著しく削ぐほどの事ではないものの、そうした箇所にどうしても目が行ってしまう人もいる事と察する。
 うるさい事を言うようだが、その辺もう少し気を使っていただきたかったところ。

 とはいえ、ゲームに限らず80’s愛が全面に満ち溢れる、オッサンには懐かしく、若い世代には新しい、ノスタルジーとワクワクドキドキがギュギュっと詰まった秀作である事には変わらない。もし次回作があるなら、今度は是非ともスト2バーチャファイターといった90年代の格ゲーをテーマに撮っていただきたく。いや、アメリカだから「モータル・コンバット」か?


 ☆☆☆★★+++

 「パックマン」の開発者、岩谷徹氏のゲスト出演にも注目(本人役ではありません、念のため)、星3つプラス3つ!!