「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」「進撃の巨人エンドオブザワールド」感想


 諫山創原作の人気コミックを、のぼうの城樋口真嗣監督君に届け三浦春馬主演で実写映画化。

 例によって前後編合わせての感想。とりあえず、原作との差異やオリジナル要素を考慮せずに評価すると、怪獣モノとしてはまあまあ、アクションものとしては中の下、ドラマ面は下の中、といったところ。

 爆発描写とCGに定評のある樋口監督だけに、巨人の圧倒的な重量感と存在感は素晴らしく、人類に襲いかかる彼ら(?)を観るために金を払う価値は十分にアリ。回数こそ少ないものの、巨人化した主人公エレンの戦闘シーンはどれも高クオリティで、特撮ファンのみならず、格闘技ファンも納得の出来と察する。

 また役者陣の熱演、特にハンジ演じる石原さとみの過剰なまでにハジケた芝居と、サシャ演じる桜庭ななみの、控えめながら抑えるべきところをしっかりと抑えた確かな仕事ぶりが、作品世界の構築に、大きく貢献していると感じられた。

 とはいえ、本作で褒められる点はおおよそその二点のみ。逆に言えば、その二点で何とか体裁を保っているといった具合で、他は正直かなりユルユル。タイトルに「ワールド」と付いている割に、世界観及びその密度は恐ろしくミニマムで、動いている人間や力関係諸々を鑑みても、広げた風呂敷10に対して中身はよくて2か3、といった印象を受けた。
 もちろん、「壁の内側に隔離された世界なんだから当たり前じゃないか」なんて意味ではなく、あらゆる事柄に厚みを感じない、とでも言おうか。例えば調査兵団や、國村準氏演じるクバル率いる連中も、彼らがそう言っている、あるいはそう呼んでいるだけで、まるで舞台の書き割りのごとく、まったく実態がないモノのように思われた。

 舞台設定がそんな調子なので、肝心のストーリーがどの程度かは推して知るべし。合計3時間ちょっと、無駄にクソ長い事でお馴染みの「タイタイニック」より若干短いぐらいのフィルムを、わざわざ前後編に分けた意図については、この際置いといても、各パートごとの詰め込み、掘り下げがことごとく甘く、しかも困ったらセリフで長々と説明という、一番やってはいけないパティーンをぶちカマしてくる辺り、過去の失敗が何一つ生かされていない証左と言える。
 おまけに、金のかかるCGを極力使いたくないのか、やたらと挿入される景色だけが延々と移されるシーンや回想シーンに、正直ウンザリ。こうしたムダをばっさりカットして、尺をギュッと縮めたら、おそらく2時間強で全行程収まったのではないかと、勝手に邪推してみる。

 さらに付け加えるなら、原作の人気キャラクター・リヴァイ兵長の代わりに登場したオリジナルキャラ、長谷川博己演じるシキシマいらない子っぷり。
 大人の事情か何なのかは与り知らないとはいえ、どうしてあんなポンコツキャラを用意したのか、甚だ疑問。存在はウザい上に場の空気までぶち壊し、ついでに最初から何となく「アレ」だろうなーと匂わせながら、ラスボス観漂う謎多きキャラという設定なのに、いまいち頭良さそうに見えない、むしろいちいちナルシシズム全開でアホっぽいのは、いかがなものか。
 長谷川氏を悪く言うつもりはないが、例の「あの」ライターによる「ここでカッコいい事言っちゃうぜ、名言残しちゃうぜ」勘違い脚本が、そのポンコツ具合にさらに拍車をかけている。ぶっちゃけあんな台本なら、言葉を話せない女子高生が自分の体験を基に書いたミュージカルの方が数倍マシ。

 100級巨人の正体は、ガッカリを通し越してもはや「スコー」だし、エレンが巨人になれる理由に関しても、続編に繋げたいのか恐ろしくウヤムヤ。
 加えて、渡部秀武田梨奈といった、アクションに強い俳優を揃えつつ、ほぼ出てきただけの飼い殺し状態で、「残念」「勿体ない」「どうしてこうなった」のバーゲンセールといった出来。良作になりえる条件はそれなりに整っていたのに、実に惜しい。


 これが日本映画界の限界か、なんてセリフは死んでも吐きたくないが、ここで何度も書いているように、そろそろ戦い方を本気で考え直すべきではないだろうか。さもなければ、世界に誇るべき我が国の映画文化は、その悉くの他国の「巨人」に食い尽くされてしまうのではという危惧を覚える。本作が、その意味で良いきっかけになればいいのだが…。 

 ☆☆☆★★−

 で、結局ツヨポンは何しに出てきたの?石原さとみ桜庭ななみに免じて、オマケの星3つマイナス!!