「キングスマン」感想


 キック・アスマーク・ミラー原作マシュー・ヴォーン監督英国王のスピーチコリン・ファース主演。どの国にも属さない最強のスパイ機関キングスマンが、人類滅亡の危機に立ち向かうスタイリッシュ・スパイアクション。

 キック・アスジャスティス・フォーエバー」の悪いところをすべて取り除き、スパイアクションものとして新生させたらこうなるのでは?という印象。後述する多少のユルさや、悪ノリしすぎたと思しき点も見受けられるものの、満足度は非常に高い。

 まず何と言っても、コリン・ファース演じるベテランスパイ・ハリーの、紳士的でエレガントな立ち振る舞いと、スタイリッシュな戦闘シーンが素晴らしい。以前、モネ・ゲームでもコミカル且つ豪快なアクションを披露してくれたが、齢55にしてここまで素早く、美しく動けるものかと驚愕するとともに、そのまま作品世界を構築していると言っても過言ではないその存在感に、改めて彼の演者としての凄さを思い知らされた。

 もう一人の主人公ともいうべき、タロン・エガートン演じる新人スパイ・エグジーとの対比も面白く、若さゆえに暴走するコメディリリーフ的な役割を果たしつつ、彼をスカウトしたハリーとの師弟関係を軸とした、成長譚という側面をも持たせている。
 下手をすれば、ダラダラと蛇足的になりがちなライバル達との訓練シーンも、無駄なくスピーディに、しかし青春学園モノのような雰囲気を上手くプラスする事で、ストーリーの進行を妨げず、同時にシリアスになり過ぎない緩衝材としても機能しているように感じられた。最後は尻だけに(以下略)。

 そしてやはり、作中に登場するスパイガジェットの数々が、オッサンのヲタ魂をものの見事にくすぐってくれてグッド(笑)。防弾傘や、某名探偵でお馴染みの(違)時計型麻酔銃をはじめ、荒唐無稽さとリアリティのギリギリいいところを突いた、アイデア満載のアイテムは、観ているだけでテンション上がりまくり。
 現実の科学技術が日々進歩し、例えば車もいよいよ自動運転の時代が来ようかという昨今だが、スパイにとって秘密道具は、鍛え上げられた肉体と明晰な頭脳とともに、絶体絶命のピンチから起死回生のチャンスに転じるために必要不可欠なモノであり、代名詞でもあると断じてしまいたい。

 惜しむらくは、そんなスパイ達と敵対するサミュエル・L・ジャクソン演じるヴァレンタインが、悪役として少々パンチが弱かったかな、という点。もちろん、地球のために増えすぎた人類の大半を抹殺する、狂気の計画を実行できてしまう頭脳と財力と組織力を兼ね備えた強敵である事は間違いないのだが、彼を含め実際の戦闘力がずば抜けていたのがソフィア・ブテラ演じるエロい尻の義足の殺人マシーン・ガゼルだけだったせいか、どうやったらこんなヤツ倒せるんだ?という圧倒的な印象がなかったように思われる。
 ハリーとの腹の探り合いをしながらの会話シーンなど、観るべき点もあったのだが。残念。

 また、個人的な事を言えば、中盤の教会のシーンは、ものすごく雑、あるいは意外性というより、予想を悪い意味で越える展開で、少々唖然としてしまった。その後のクライマックス前の「爆発」シーンも、あまりに大雑把というか、本末転倒というかで、あの一連と、冒頭の「真っ二つ」「ノリ」の一言で享受できるかどうかで、本作の好き嫌いが決まると察する。
 

 「ミッション・インポッシブル」「007」を除き、この手のスパイものは比較的人気があるにもかかわらず、なぜか単発で終わってしまうケースが多いように思われる。まだまだ煮詰め足りない部分も多々あるが、久しぶりの確かなネクストを感じさせてくれた本作、是非とも第2弾、3弾と続けていただきたい。
 あ、でも、またジャスティス・フォーエバー」みたいな劣化続編ならノーサンキューね。あれはオリジナルの良さを、全て殺してた(大暴言)。


 ☆☆☆★★+++

 そういえばコリン・ファース、「最強のふたり」のハリウッドリメイク版にも出演するそうだよ。個人的にはアル・パチーノだと思ってたんだけど…、星3つプラス3つ!!