「ストレイヤーズ・クロニクル」感想


 本多孝好原作。人体実験によって特殊能力を得た事で、20歳前後までしか生きられない宿命を背負った少年達の死闘を描いたベストセラー小説を、ヘヴンズ ストーリー瀬々敬久監督偉大なる、しゅららぼん岡田将生主演で映画化。


 ギレン・ザビじゃないが、あえて言うなら「カス」。日本映画の悪いところを全て寄せ集めて撮ったような、いわばダメ要素の見本市とも言うべき内容。本作に利用価値があるとするなら、後進に「こんなクソみたいな映画を作ってはいけませんよ」という、反面教師的に観せる用途しか思いつかない、今日日ここまでダメなのも珍しいほどに、近年では某ガッチョメンと肩を並べるレベルの、とにかく何もかもがダメダメダメのダメダメ映画。

 映画というメディアが誕生して100年以上、21世紀に入って10年以上が経過したこのご時勢に、人体実験で特殊能力だの、寿命が20年前後だの、捻りも面白みも何にもない厨二設定もさる事ながら、自分達を生み出した人間に復讐だーとか、人類の進化がーとか、俺達の存在意義はーとか、90年代初頭のラノベで散々使い古された極寒ストーリーもまた失笑モノ。
 ために、次の展開がだいたい読めてしまうのはもちろんとして、そのいちいちが当然のごとく意外性も緊張感もヘッタクレもないグッダグダの連続で、15分過ぎた辺りからは睡魔と闘いながら「一刻も早く終わればいいのになー。マジでこのまま帰ろうかなー。誰か、スタンド能力で時間を早送りしてくれんかなー」と、そればかり考えていた。

 加えて、「クソみたいなキャメラワークとクソみたいな編集」「尺合わせのためのムダに間延びしたダラダラ演出」「カッコつけようとして逆に死ぬほどカッコ悪くなってるショボアクション」「感情論任せの適当な泣かせエピ大量投入による、白け薄っぺらシナリオ」「なんか深い事言おう、いい事言おうとしてスベり倒してるヘボ台本」等々、考えつく限りのダメ映画テンプレートをわざとぶっこんだとしか思えない、ポンコツ要素のオンパレードで、本当にこれを真面目に作る気があったのか、もしかしたら人間がどれだけつまらない映画が撮れるのか、そのつまらなさに人間がどれだけ耐えられるのかという、人体実験の一環ではないかと、妙な勘ぐりすら覚えてしまった。

 等身大の少年少女を描きたかったのか、ムダにチャラくて軽い口調も鼻につき、キャラクターもブレブレ。行動理念もことごとく理解不能で、徹頭徹尾茶番としか言いようがない。そもそも、施設から脱走して人目を避けて暮らしてるはずの連中が、暢気にカフェでお茶してるわ、デカい声で暗殺計画話してるわ、学校に通ってるわでは、リアリティの欠片もない。そうした彼らのバックボーンを含め、全てにおいて「普通、当たり前」が欠如したこんな作品が、果たして面白いわけがない。
 能力者バトルものなんだから、普通や当たり前じゃなくて当然?バカ言っちゃいけない。物語とは、人間が自身の置かれた状況、置かれた場所で何を考え、何をするかに集約される。それは普通の人間だろうが、能力者だろうが、宇宙人だろうが関係ない、普遍にして不変の定義だ。そんな、創作者としての基本中の基本をすっとばして、何が「未来の希望」だボケ。はっきり言うが、こんなものは金を払うどころか、衆目に晒す価値すらないと断ずる。

 ついでに言うなら、公園のベンチで人が血ぃ流して倒れてたら、よほど人がいないか真夜中でもない限り、さすがに誰だって気づくわ。まして、車椅子乗った男にイカツいオッサンが拳銃突きつけて、そのすぐ傍でイケメンが血まみれのサマージャケット着て立ってたら、どんなバカでも分かるだろ。この本を書いた人は、生まれてこの方外に出た事がないのか?自分以外の人間に会った事がないのか?正直、そんな根本的なレベルで破綻してると言わざるを得ない。

 ぶっちゃけ、ダメなところを挙げればキリがない、というより、ダメなところしかないので、これ以上細かいツッコミは割愛。「日本でもこんだけのアクション映画が撮れるんだぜー。おまけにこんな感動劇もできちゃうんだぜー」といったドヤ顔が透けて見えるが、ぶっちゃけ全尺合わせてもGo!プリンセスプリキュアの一話分にも及ばない。
 時間の無駄、金の無駄、上映シアター確保と光熱費の無駄、有望若手俳優の無駄。まさに「有り余る」どころか何もかもが欠落した、無駄と無駄とが重なり合って出来たガン細胞のような、「ザ・ワールド」ばりに無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァ!!!映画。


 何度も言う事だが、こんなクソ映像撮るヒマあったら、なんで日本映画が衰退しているのか、もっと真剣に考えんかい!!


 ☆★★★★

 で、「ストレイヤー」はともかく、何が「クロニクル」なんだよ。別に「年代記」でも「記録」でも、まして「新聞」でもないだろ、アホなの?星一つ!!

 追記でもう一つ。途中で何度か出てきた、80年代の素人ロックバンドみたいなフォント、今日日とてつもなくダサい上に何の効果も得られてないから、今後未来永劫使わない方がいい。そういうところがつくづく「安っぽい」ってのに、いい加減気づけよ。