「96時間/レクイエム」感想


 リュック・ベッソン製作オリヴィエ・メガトン監督。愛する家族を守るため、リーアム・ニーソン演じるCIA元工作員の最強オヤジ・ブライアン・ミルズが巨悪に立ち向かう人気シリーズの第3弾。

 元妻への殺害容疑をかけられたブライアンが、警察の追っ手から逃げれつつ、真犯人の突き止めるべく奮闘する姿を描く本作。正直、第一作の出来がよすぎたため、前作、今作ともに期待度に反比例してのパワーダウン観こそ否めないものの、わりかしキレイにまとまってはいたな、という印象。

 娘を救うためならエッフェル塔をぶっ壊し、別れた女房のピンチにはイスタンブールを街ごと破壊。繊細にして大胆、神出鬼没にして無敵な親父パワーは本作でも炸裂。あまりに無敵すぎて、どんなピンチもピンチに見えないのが多少難点ではあるものの、それでもやはり、危機的状況をあの手この手でスルリとかいくぐってしまう熟練の手腕は、観ていて手に汗握る。

 ストーリー面も、これまでシンプル・イズ・ベストとは打って変わり、事件の真相に辿り着くまで、状況が二転も三転もひっくり返る展開で、なかなか見応えアリ。そこそこ教養のある人なら、かなり初期の段階で真犯人は分かってしまうだろうと察するが(エー)、ここは「頭を空っぽにして、何も考えないで観る」というリュック・ベッソンの流儀に従い、素直に騙されてあげる事をオススメする。

 とはいえ、まったく欲張りな注文かもしれないが、それだけに魅力的な登場人物たち、特にフォレスト・ウィテカー演じるドッツラー警部や、妊娠が発覚したブライアンの娘・キムを、もう少しうまく使っていただきたかったところ。
 結局、最後はブライアンが皆を圧倒するのはお約束としても、彼をあと一歩まで追い詰める、あるいは先を行くぐらいのライバルがいても良かった気がする。あの警部がそういうポジションを担い、且ついいコンビになれそうだったのに、何とも惜しい。

 また、肝心のアクションシーンに関しても、相も変わらず還暦すぎたロマンスグレーがえっちらほっちら全力疾走している姿はともかくとして、某実写ルパン並に編集がドヘタで、迫力が半減。
 そもそも、銃撃戦にせいカーチェイスにせい、なぜ一秒ごとにカットを切り替えるのか。それだけ使われるキャメラの台数が増えるだけで、大した費用対効果も得られていないのに。爆破やスタントの絵そのものは良いものが多かっただけに、もったいない。

 ミスリードを誘うための伏線らしきものも含め、話のスジとしては概ね悪くないものの、肉付けの段階で方向性を間違えてしまった感じ。まあ、休日ビール片手に観るにはいいかもしれないが、シリーズのファンとしては、少々寂しい完成度となった。

 もっとも、「最終章」と銘打ちながら、2、3年後にはちゃっかり新作が公開されてそうだが(笑)。テロリストどもを叩きのめしながら、泣きじゃくる孫をあやし、おむつを替えるブライアンおじいちゃんも観てみたい…ような、観たくないような(ドッチダヨ)。
 ちなみに、舞台は日本か香港になると予想。


 ☆☆☆★★+

 あと、「96時間」観も「レクイエム」観も特にないです(エーー)、オマケの星3つプラス!!