「ゴーン・ガール」感想


 ギリアン・フリン原作(脚本も担当)のサスペンススリラー小説を、「セブン」デヴィッド・フィンチャー監督「アルゴ」ベン・アフレック「007 ダイ・アナザー・デイロザムンド・パイク主演で映画化。

 突如失踪した妻と、彼女の殺害容疑をかけられる夫という、鬼才デヴィッド・フィンチャーにしては随分普通の題材だなーと思いきや、当然のごとく(?)二転三転ちゃぶ台返しは当たり前、最後までどうなるかまったく予測不可能の、骨太極悪ドロドロミステリーだった。

 まあ、これから何を書いてもネタバレになりそうなので、要点だけパパッとまとめて切り上げる事にするが(エー)、ここまで後味悪く、しかも震えるほど恐ろしい映画も珍しい。実はギリアン・フリンとは、湊かなえの別名なんじゃないかと勘ぐりたくなるぐらい(ネェヨ)、「告白」「白ゆき姫殺人事件」に匹敵する、超弩級の真っ黒さ加減。
 とりあえず本作を観て、やはり一生涯結婚なんぞするまいと、堅く心に誓った(エーー)。

 とはいえ、男の目線と女の目線、両方を巧みに使いこなし、おそらくはどちら側にも訴えかける絵に仕上げている点は、さすがのフィンチャー節。男の情けなさやバカさ加減はもちろんの事、女の強かさと達観を、しっかりと分かりながら撮るなんて芸当、そんじゃそこいらの映画人では真似できまい。

 真犯人についても、他人から愛されるためなら、自身が傷つくことも厭わない、ある意味ダークナイトジョーカーばりの自己プロデュース力、言い換えれば屈折した究極のナルシシストというべき存在を、禍々しくも魅力的に描写。監督、脚本、演出もすごいが、何より演者の力量がとにかく凄い。間違いなく、本年度最高レベルの名演技であった。
 あのラストに不満を覚える人も当然いると察するが、中盤に登場するある人物が、多少溜飲を下げてくれているとともに、もしかしたら本編の後、何かしらのきっかけで…という淡い期待(?)をもたらしていると、個人的には思う。

 本当はもっと「あのシーンはこうだ」とか、「ここの場面は後のこれを示唆していたんだよ」とか、色々書きたいのだが、あんまり言うと重要なヒントをポロッと吐いてしまいそうなので、この辺でグッと堪える。


 正直、内容的に好きか嫌いかと言われれば、決して好きな部類の話しではないが、小生がフィンチャー信者である点を除いても、一見の価値は充分以上にある作品。とりあえず、気になる人はカップルでの鑑賞をオススメしておく。

 いやー、夫婦愛って本当に素晴らしいですね!(スーパー・スティック・リーディング)。


 ☆☆☆☆★−

 ちょっと尺が長すぎるんで、そこだけ減点。星4つマイナス!!