「神さまの言うとおり」感想


 別冊少年マガジン金城宗幸原作・藤村緋二作画で連載された同名コミックを、悪の教典三池崇史監督仮面ライダーフォーゼ」福士蒼汰主演で映画化。

 まったくありがちなデス・ゲームものに、世にも奇妙な物語的な不条理でナンセンスなエッセンスを絡め、ムリヤリ約2時間のフィルムに収めたという印象。この手の作品の作り方を心得た三池監督だけに、それなりに観るべきところはあるものの、全体的に極めて淡白且つ投げっぱなし観満載で、正直一本の映画としてはかなりイマイチの出来。

 のっけから、動くと頭が赤いビー玉とともに飛び散る「だるまさんがころんだ」ではじまり、それからラストまで、ひたすら無慈悲で凄惨なバイオレンス映像のオンパレード。なぜ突然そうなったのか、主催者(?)の目的はなんなのか、その具体的な正体は何なのかは完全にすっ飛ばし、不特定多数の高校生達をワケも分からないまま惨殺しまくるという、ある意味清々しいほどストレートな作り。

 「かごめかごめ」「缶蹴り」といった、昔ながらの子供の遊びと、どこまでも情け容赦のない殺戮ゲームとの対比もさる事ながら、どこかスタイリッシュな映像美さえも感じられるのは、さすが日本映画界の番長・三池監督といったところか。
 逆から言えば、この内容…というか、内容らしい内容もないこの話しを、三池監督以外の人が撮ったなら、ただただ血飛沫がバーーン!!女の子がキャーー!!男の子がウォーー!!ってだけの、箸にも棒にも引っ掛からないモノが出て来たに違いあるまい。いや、正確にはほぼそういう展開なのだが、一応まがいなりにも人から金を取って観せるだけのクオリティに引き上げている点は、素直に評価させていただく。

 とはいえ、上記したように、何の説明もカタルシスもないまま、ただただ得体の知れないダルマやらコケシやらに言われるまま、ゲームをこなしていくだけなため、ストーリー的には薄っぺらい事この上なく、さらに途中登場する、三島平八みたいな頭したインチキ教授や、大森南朋演じる引き篭もり等、謎の要素がほとんど謎のまま終わるという投げっぱなし展開には、ぶっちゃけ唖然。

 おそらくこのスタッフは、本作を「ソウ」のようなシリーズものにする腹積もりなのだろうと察するが、あれではまるで、壮大なお試し映像、あるいは無料を謳ったソーシャルゲームで、途中まで進んだところで「ここから課金、またはチャージまで1週間ほど待ってね!」と表示されたような、何とも言えない肩透かし観とガッカリ観。

 加えて、ゲームに生き残った生徒を「神の子」と崇める集団も、いったいどこから湧いて出たのか、そんなネット情報流したのは誰なのか、そもそもケータイの電波も届かない、完全密室の脱出不能な状態にも関わらず、どうして学校内で殺人ゲームが行われ、その生き残りが白い生六面体の中にいるとの情報が漏れたのかも完全に謎。
 原作読めば分かる?バカ言っちゃいけない。原作を読まないと楽しめないようなら、ハナから映画化なんぞするべきではない。そりゃもちろん、原作ファンなら多少大目に見たくなる気持ちも分かるし、小生にもそういう部分は多分にあるが(原作ファンだからこそ許せない場合もあるが)、やはり映画は映画、原作は原作と、きっちり分けて考えるのがスジというもの。むしろ、映画を観て原作に興味を覚える、ぐらいのところまで持って行ってナンボではないのか?

 主要キャラっぽいヤツがバタバタ死んでいくとか、敵役がいちいちバカバカしいとか、軽くその辺に置いておくとして、この手のデス・ゲームものはハリウッドでも食傷気味なので、よほどいい原作か題材を持って来ないと、難しいのでないだろうか。
 ただ単に、人がバッタバッタ死んで行くスプラッタ映像が観たい人にはちょうどいいかもしれないが、やはり創作物に5W1Hを求める身からすると、もうワンパンチとフィニッシュブローがほしかったところ。


 ところで、なんでこの手の主人公って、ごく普通の学生とか言いながら、突然あんなスーパーパワーに目覚めるの?てか作中、スマホで録音するシーンあったけど、目の前で人が殺されている時に、あんな冷静に行動できるもんかね。むしろ、自分が生き残るために捨石にしたようにしか見えなかったんだけど…。その辺どうなん?


 ☆☆☆★★−

 それから、福士くんならあんなふざけたクリーチャーども、フォーゼに変身してぶっ倒せばいいじゃんとか絶対言わないからな!絶対だからな!!星3つマイナス!!