「ローン・サバイバー」感想


 バトルシップピーター・バーグ監督「テッド」マーク・ウォールバーグ主演アメリカの精鋭特殊部隊ネイビー・シールズ設立以来、最大の悲劇と言われる2005年アフガニスタンでのタリバン指導者暗殺計画「レッド・ウイング作戦」を実際に経験し、唯一生き残った元隊員の手記を原作とした、サバイバルアクション。

 この話し、どこかで聞いた事があるなと思いきや、数年前に読んだ「これからの「正義」の話をしよう」マイケル・サンデル教授著)の中で、隊員達が軍の規律に背き、羊飼いを殺さず逃がす、本作のキーとなるエピソードについて軽く触れられていた。そういえばあの本、最後まで読みきらないうちにどこかに行ってしまったな。また親戚の誰かがパクっていったのか、はたまた勝手に捨てられたのか。人の本棚にあるモノを断りもなく持って行くな、まして捨てるなと、あれだけ言っているのに…。今度、全額弁償させてやる。

 それはさておき、単刀直入に言ってしまうと、この作品は史実を基にしているだけに、如何せん伝えたい事の優先順位が分かりにくく、人によっては単なるアメリカ万歳、あるいは米軍のプロパダンタ映画としか見受けられないだろうと察する。
 おそらく、それも間違いではないのだが、もっと他の部分、例えば上記した羊飼いを逃がした判断は、本当に正しかったのか、結果だけを見れば明らかな判断ミスだが、それは米軍全体ではなく一個人としてはどうだったのか等、あらゆる側面に対しフォーカスする事で、見えてくるもの、そこから得られるものもかなり変わってくるのではないかと、小生は考える。

 冒頭、ネイビーシールズの想像を絶する過酷な入隊テストの模様と、作戦に参加した隊員達の人となりとその日常を見せる事で、最強の精鋭部隊と呼ばれる彼等の存在に説得力を持たせ、同時に切れば血の出る普通の人間としての部分をも巧みに表現。
 ために、そのほとんどを戦闘シーンが占める中盤以降、いつどこからカラシニコフやRPGの弾が飛んでくるか分からない緊張感と、文字どおりボロボロになりながら、それでも生き残ろうと必至に抗い続ける精鋭4人の奮闘とが相乗し、絶望的な状況下でも決して諦めない、生きた人間の生へと渇望と、自らが艱難辛苦を乗り越えてきたスペシャルソルジャーなんだという誇りが、画面から滲み出ているようであった。

 個人的には途中、追っ手から逃れるために崖から転がり落ちるシーン(しかも2回!)が、あまりにも痛々しすぎて思わず声を上げそうになってしまった。大の大人がゴッツゴツの岩石剥き出しの斜面を、頭や手足を打ちつけながらゴロンゴロン転がり落ちる様たるや、傍から見ると滑稽ながら、タリバンに撃たれなくてもこれで死ぬんじゃないか?というぐらいの臨場感とムダな迫力。さすがに演者ではなくスタントマンが行ったのだろうが、今日日ジャッキーだってなかなかやらないようなあんなアクションを、よくもまあ引き受けたなーと、別の意味で感心してしまった(笑)。
 正直、あの場面だけで本作の完成度が1、2割増しになったと言って過言ではない。


 確かに、実話を元にした手記という面から言えば、隊員達のヒロイズム溢れるいかにもな行動に、「ホンマかいな」と勘ぐりたくなる部分はあり、またクライマックスとオチの展開も、ご都合とは言わないまでも、いまいち何だったのか不明な点も見受けられる。
 まあとはいえ、その手のエンタメ的な誇張も含め、かつて実際にこうした事件が起こったという事実を知っておくきっかけになるなら、観ておいて損はない作品かと。もちろん、単純に戦争モノが好きな人なら、無条件でオススメ。


 ハイ、いつも以上になんのこっちゃ分からん内容だけど、とりあえずこの辺で。


 ☆☆☆★★++

 ちなみに、我が国にも千昌夫氏と岸部シロー氏というローン・サバイバーが(ヤメロ)、星3つプラスプラス!!