「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」感想


 ひらりん「のろい屋しまい」シリーズ原作。ゴッドイーター(PV )」平尾隆之監督×ufotable製作。魔法や呪いをかけたり解いたりする事を生業とする「のろい屋」を営む魔女っ子姉妹のヨヨネネが、魔法世界と現代世界を巻き込んだ大騒動を解決するべく奮闘する、ファンタジックアクションムービー。

 一言で言うなら、堅実で丁寧な作り。特に目新しい何かがあるわけでなく、ビックリするような超展開があるわけでもないが、細部に確かな仕事が光る。多少の欠点、ツッコミどころがあるにせよ、それを補って余りあるだけの魅力に溢れた、まさに世界中どこへ出しても恥ずかしくない、平尾監督と同スタジオにとっての名刺代わりとなる一本と評したい。

 基本、現代世界に飛ばされたヨヨと、そこで出逢った少年との交流を軸にしつつ、魔法と近代科学との差異、それによる感覚・感性の違いをうまくストーリーに盛り込み、ごく自然な形で序破急を展開させている点はグッド。
 変にエロ&萌えキャラナイズされていない、かといって下手にチャイルディッシュすぎないキャラクター達のほどよい愛くるしさと、目まぐるしく動き回る動画の気持ちよさ、そして柔らかでポップな色調が、それぞれを見事に相乗させている。

 主人公の二人を含む主要人物はもちろん、画面上にほとんどムダな配役がなかったところも、非常に大きなプラスポイント。例によって詳しくは書けないが、そこら辺で写メを撮っている通行人、あるいはたまたまヨヨ達の隣に居合わせたモブキャラに至るまで、全員にしっかりと役割を持たせ、行動させる事で、ある種の群像劇としての側面を見せる事にも成功している。
 イケメンか萌えキャラでも適当に出しときゃ、アニヲタがブヒブヒ言って金払ってくれるだろうなんて勘違いしている連中も多少なり見受けられる昨今、その意味でも本作は、キャラクターポジショニングの何たるかを説いた手本のような作品と言える。無論、全てが完璧とは言わないが、これだけの仕事を見せつけられたのなら、文句のつけようがない。

 とはいえ、上記のとおり他の面で苦言がないわけではない。例えば、後半の展開がやや詰め込みすぎな上、ゴチャゴチャで何をやっているのかよく分からなくなってしまった観は、正直否めないところ。特に、クライマックスの「石」のシーンは、前後にそれを匂わす演出が一応あったものの、あまりに突然に思えて、少々面食らってしまった。

 また、「絵本級大魔法使い」という総称のランク、底なしと称されるヨヨの魔力と、(原作では)姉の才能に近づこうと努力したというネネとの能力差等、説明不足に感じる部分も多少目立つ。細かい設定よりスピードを重視した結果なのかもしれないし、それで大きく作品の価値を貶めるモノではないにせよ、せめてパンフレットやネット情報に頼らずに、どの程度か見て取れる目安のようなモノが欲しかったところ。


 もう一つ、個人的に付け加えるなら、実は公開当日に観に行ったのに、来場者プレゼントの焼きそばをもらえなかった事(笑)。しかも、作中であんな美味そうにバクバク食ってるシーンなんぞ観せられたら、嫌でも食いたくなるに決まっている。アレは一種のサブリミナル効果だ。おかげで、レイトショーでの鑑賞だったにも関わらず、帰りにコンビニでビッグサイズのヤツを購入してしまったではないか。放送倫理に則り、真夜中の飯テロ映像の上映禁止をここに強く要求したい!!

 …まあ、そんな映像あってもなくても、結局何かしら食っちまうし飲んじまうんだが(エー)。


 閑話休題
 以上のようなマイナス面も確かに存在するものの、全体的に見ればすこぶる出来のよいアニメ映画である事には違いない。最近では円盤が思うように売れないといった、ヲタアニメ限界説もまことしやかに囁かれるが、こうした老若男女楽しめる真っ当な作品を生み出せる余地があるなら、まだまだジャパニメーションは大丈夫だろう。
 業界全体の底上げのためにも、是非ともより多くの人に鑑賞していただきたい。


 ☆☆☆★★++

 そういや、何でヨヨは現代世界で大きくなったの?呪いの力が弱まったから?星3つプラスプラス!!