「ガッチャマン」感想


 タツノコプロ原作の、日本を代表するヒーローアニメ科学忍者隊ガッチャマンを、カイジ佐藤東弥監督、侍戦隊シンケンジャー松坂桃李主演で実写化映画化。2050年代、謎の組織ギャラクターによって侵略された世界を救うべく戦う、不思議な力を宿す石に選ばれた適合者達の活躍を描く。

 製作発表と同時に、映画ファン・タツノコファンの間で「悪い事言わないからやめとけ」の大合唱、さらには某批評サイトにて「100点満点中4点」という異例の評価を得、ある意味公開前から多くの話題を振りまいた本作。いざ蓋を開けてみると、なるほど噂の次元を遥かに越える、まさに聞きしに勝る、否、聞きしに劣るガッカリ映画だった。

 まず何が酷いって、脚本が絶望的に酷い。謎の石の力だの、選ばれた者は兵器として生きるだのの痛設定もさることながら、驚くほどもっさりした、しかしまったく厚みのないスッカスカのストーリーと構成で、その出来たるや、ぶっちゃけヒマな中二病患者が授業中ノートに書き連ねた、あとで読み返して布団の中で赤面しながら身悶える痛妄想と同等のレヴェル。
 矛盾、未回収は当たり前。個性もヘッタクレもなく、主義主張がコロコロ変わる登場人物はもちろん、地名ではなく「ヨーロッパ」「中央アジアと超アバウトな舞台説明に、「残りあと○分!!」という状況下で暢気におしゃべりを始めるゆるさ加減。さらに、一つも面白みのない、悪い意味でマンガ的なセリフと冗長なやりとりに加え、要所要所にぶっこまれる眠たいヒューマニズムやら、甘っちょろい正義論やら、青臭いラブコメ要素のオンパレードが輪をかけ、もはや失笑すらできない。
 一体誰がこんな本を書いたんだと思いきや、ナントこれがドラゴンボールZ 神と神」と同一人物だと言うから驚きを隠せない。向こうは鳥山先生の監修があったとはいえ、何をどうしたらこんな酷い本が出来上がるのか、日活東宝は本当にこの内容でOKを出したのか、日本映画界にまた新たなる疑惑が残されてしまった。

 また、オリジナルに準じたとはいえ、松坂くん演じる主人公ケン綾野剛演じるジョー、そしてもう一人以外はほとんどただそこにいるだけ、松本人志の言葉を借りるなら「将棋の駒で五角形の裏表に何にも書いてないようなヤツら」で、他のメンバーそれぞれの作中の役割を含めても「ホンマにお前、この絵に必要か?」と胸ぐら掴んで問い質したくなる程度に、完全な員数合わせ状態。
 特に、ネット界隈で圧倒的人気を誇るゴーリキー綾芽演じるジュンは、存在感が極めて薄いのにキャラがウザいという、ヒロインにあるまじき謎スキルを如何なく発揮。しかも、他人の演技まで邪魔をする、例えるなら沸騰させたポカリスエットのような、大して味もないのにどんな料理にも合わないというミラクルっぷりを披露。南部博士演じる岸谷五朗の変な髪型も相俟って、演技力がどうとか以前に、生まれ持った素質の部分で、正直あの子はメインを張れる女優ではないと確信した。

 そもそも、わずか17日で世界の半分を制圧したにも関わらず、それから10年近く経って未だに完全制圧できていないギャラクターもおかしな話しであるし、そのギャラクターにあらゆる近代兵器が通用しないとやはり何年も前から分かっているのに、未だに同じ武器で立ち向かう軍もまたおかしい。
 石(これもまた、漠然とした表現だな…)の力が唯一それに対抗でき、且つ巨大な衛星レーザーに応用できるのなら、適合者じゃなくても使える銃の一つでも開発した方が早かったのでは?そういう素人でも気づきそうな部分にさえディテールがさっぱり。出来損ないのドロンジョみたいなベルク・カッツェはさておいても、結局あの人を殺したのは誰なんや、最初に出て来たアレは何やったんやと、観終わった後に残るのは理不尽な疑問のみ。そんな作品が、はたして面白くなるわけがない。


 この際だからはっきり書くが、これをわざわざガッチャマンとして撮った意味が分からない。共通点らしいのはメンバーと敵方の名前ぐらいで、もはやモチーフ、あるいはオマージュと呼ぶ事さえ憚れる。さらに言うなら、こんなのに金を突っ込むぐらいなら、シンケンレッド変態仮面の競演でも撮った方がまだマシ。スパイダーオルフェノクと少年期のゴーカイレッド、何ならターちゃんの中の人までいる事だし、よっぽどまともなモノが出来そうな気がするのは小生だけか?(実現できるかどうかは別にして)


 少しぐらい褒める所を探そうと思ったが、ここまで何もないとは思わなかった。そこそこのコスト使ったコスプレムービーといった具合で、ぶっちゃけ人から金を取って見せる商品として成立していない。今一番の若手注目株にして、特撮ファンから「殿」の愛称で親しまれる松坂桃李くん、否、松坂桃李きゅんの俳優人生の中で、間違いなく大きな汚点になるであろう本作、どうやらハナから続編を作る気満々のようだが、そんなもん誰も観たくないだろうし、彼も内心もう勘弁だろうと察する。
 という事で、自ら進んで地雷を踏もうなんて無謀な方はいらっしゃらないとは思うが、ネタ以外ではくれぐれも近づかないよう、どうか十分注意されたし。お金と時間は大切に!!


 ☆★★★★


 こっちのブログに引っ越してきて初めての、星1つ!!


 ところで本作に限った事ではないけども、敵側の女が主人公(もしくはその仲間)の周りをウロウロ歩きながら語り出す例のアレ、いい加減やめてくれんかな?特に、組織の成り立ちとか、事件の真相とか勝手にベラベラしゃべるの、正直かなりウザい。それから、あとちょっとでトドメって画面で、ゆっくり近づきながらトリガーに手をかけ〜、あるいは銃口にビームの光が〜、みたいなのも。
 見飽きたってのもあるけど、思ってるような効果は何一つ得られてない上に、間が冗長になるだけ。セリフ的なセリフ(例:「貴方は一つ大事な事を忘れている。人は心がある、という事を…!!」「お、おい、待てよ!!」)と同じで、現実にあんなヤツいてないし、もしいたらちょっと頭おかしい子だし、ガチで禁止してほしい。
 機会があったら、ぜひ一度意識して観ていただきたい。断言するけども、そんな演出を多用する映画は、十中八九つまんないから。


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