「映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!」感想

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 小さなお友達から大きなお友達まで大人気のテレビアニメ、待望の劇場版。謎の少女・ニコに連れられ、絵本の世界にやってきたプリキュア達の活躍を描く。

 しかしいきなりで何だが、アニメ激動の90年代を知る我々世代にとって、林原めぐみさんと言えば、人気・実力ともにナンバーワン、まさに声優界最強と呼ぶべき存在である事は、論を俟たないところと断ずる。
 彼女の残した数々のパイオニア的功績の説明は、この際ウィキにでも譲るとして、この人なくして、水城奈々をはじめとした昨今の「歌手としても認知された声優」の登場と活躍はなかったに違いあるまい(ちなみに、林原さん自身は本人の意向により、単独での有料コンサートは開催しないとの事)。
 その点を踏まえても、おそらく本シリーズの製作がもう10年早ければ、確実に主役を演じられたであろう彼女が、こうしてゲスト出演される事は実に感慨深く、同時に、ここでリーサル・ウエポン出しちゃって、ここから先のシリーズはどんなサプライズを持ってくるつもりだと、どうでもいい不安をも覚えてしまう。
 まあつまり、林原めぐみという名は、そのくらい象徴的なのだと、若い諸兄姉にもご理解いただきたい。

 余談はさておき。内容としては、良くも悪くもいつもどおりのドタバタ劇で、ある意味安定した作り。キュアハッピー=みゆきが幼い日にニコと交わした約束と、彼女が笑顔にこだわるきっかけとなった出来事を軸に、仲間との絆、誰かを思う心の強さ、そして「善悪」とは何かをうまく盛り込みつつ、しかし未就学児が充分に楽しめる娯楽作へとまとめ上げている点は、毎度の事ながら評価に値する。

 しかし、これはテレビシリーズ本編でも言える事だが、キャラクターの掘り下げが思いのほか浅く、言動が意味不明に観えてしまう箇所がいくつかあったのは、非常に惜しい。
 例えば、ニコを連れ去り、絵本の世界から笑顔を消し去ろうと企む魔王。彼(?)を額面どおり、ただのラスボスとして観るなら、色々と腑に落ちない点も出てくるが、あくまで絵本の登場人物、つまりニコと相対の関係にあるものと気づけば、ウルトラキュアハッピーの行動と結末の意味、さらに言えば、なぜ「魔王」という抽象的な名称なのかも、見えてくるはず。
 が、そこに至るまでの心境描写が非常にあっさりなため、まだ読解力の拙いチビッコ達(あるいはその親達)には、単純に「どんなに悪いヤツでも、最後は笑って受け入れる優しいプリキュアとしか映らなかったのではと、勝手な危惧を抱いてしまう。もちろん、それはそれで間違いではないのだが、できればもう一歩進んだ咀嚼なり指針なりを、加えていただきたかったところ。

 桃太郎牛魔王に関しても同様。「善と悪」の構図に対し、毎回プリキュアシリーズは他のヒーローとは一味違ったアプローチを見せてくれるだけに、何かしら「これは!」という部分があれば。いい材料は揃っているのに、もったいない。

 まあそれでも、いつものように笑って泣いて、最後はみんなでハッピーエンドの安心仕様である事には変わらず。あまり多くの求めるのはそれこそ野暮というものなので、過度の期待をせず、あくまで「テレビの延長」と思えば、誰でも楽しめる、はず。

 ちなみに、通常大きなお友達はもらえない「ミラクル翼ライト」売店でちょっと豪華なバージョンが580円で売られているので、どうしてもプリキュアを応援したいんだコンチクショーめという稀有な方は、チェックしてみると吉かと。
 なお、店員と隣の席の御子に白い目で見られる事確実なため、相応の覚悟を決めてから購入されたし。ハンパが手を出すと…火傷するぜ!(痛)


 ☆☆☆★★

 星3つでウルトラハッピー!!…ではないけどまあまあハッピー!(ナンジャソラ)



 ていうかアレ、絵本というより童話の世界なんじゃ(以下略)。



 林原さんの歌では、これが一番好きかな。あと「Too late」とかね。

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絵本の中はみんなチグハグ! 講談社のテレビ絵本 講談社発行年月:2012年10月 ISBN:9784


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