「テルマエ・ロマエ」感想
主人公ルシウスをはじめ、主要ローマ人役に顔の濃い日本人キャストを起用するというムチャぶりに、一抹の不安を覚えつつ劇場に臨んだ本作だが、意外と悪くない出来。とはいえ、前半と後半の展開の差に、少々温度差を感じてしまった。
依頼主の難解な注文に頭を悩ませるルシウスが、現代日本（風呂限定）にタイムスリップを繰り返し、その都驚嘆しつつも度発達した浴場技術を持ち帰るという、原作の流れはほぼそのまま。
シャンプーハットやケロリン桶、果てはウォシュレット等、我々にとっては当たり前の、しかし古代ローマには到底存在し得なかったであろう数々のアイテムを、いちいち大真面目に分析し、不必要なほど衝撃を受けるルシウスの堅物さ加減もさることながら、演じる阿部寛氏の文字どおり身体を張った演技もグッド。
また、本家イタリア・チネチッタに設けられた広大なオープンセットに加え、ムダに再現度の高い作中の小道具も、笑ってしまうくらい気合入りまくりで高ポイント。
キャラクターもののシャンプーボトルなどはもちろん、ストリジル（垢すり）といった今日日誰も使わないような古代の入浴道具まで忠実に再現。はたから見ると滑稽な事でも、当人達が大真面目である以上、全力でそれにあたらなければならんという体現といえる。
しかしそれだけに、後半からのオリジナル展開は正直蛇足で、何故こんなストーリーにしてしまったのだろうという疑問を憶える内容。
上戸彩演じる漫画家志望の女が、反対に古代ローマへとタイムスリップしてくるのはまだ良しとして、そこから歴史が変わるだの、ローマと皇帝の危機だの、ついには邦画の悪い癖である「イイハナシダナー展開」にスライドさせてしまったのは、手痛いミステイク。
せっかくの劇場版だから、ちょっと派手な内容にしよう、ついでだから定番の泣きテイストなんかも加えて、笑って泣ける作品にしよう、とでも思ったのだろうか。
もちろん、泣ける話そのものが悪いと言うつもりはないし、実際、平たい顔族（日本人）の技術を盗むばかりで、自分では何一つ知恵を出せていないと苦悩するルシウスの姿など、物語としての見せ場もあり、それなりにまとまってはいた。が、問題はそれが本作にどうしても必要だったか、という点。
上記したとおり、本作の核心であり可笑しさの源は、真面目で堅物のルシウスが、日本の風呂とその技術にいちいち驚嘆、驚愕する様を外側から見る、すなわち「ロングショット視点による喜劇」であると個人的には思う。
原作厨の見解、と言われればそれまでだが、その点も含めて、どうにも取ってつけたような印象を受ける。そろそろ邦画も、「泣き」に頼らないエンターテイメントを開拓すべきではないのだろうか、なんて考えてしまうのは、果たして小生だけか？
まあとはいえ、役者陣のハイテンションな演技と、風呂愛（？）溢れる内容は一見の価値アリ。観終わった後、帰りに銭湯でフルーツ牛乳飲みたくなる事ウケアイ。
そんなわけで、小生の評価は、
☆☆☆★★＋
前半は３プラプラ、後半は３、平均して星３つプラス！！
