「同級生」(2016年)感想


 中村明日美子原作のBL漫画を、輪るピングドラムチーフディレクターを務めた中村章子監督でアニメ映画化。

 ちなみに、同タイトルの映画、歌謡曲、及び恋愛ゲームが多数存在するが、概ね関係ないので悪しからず。

 さておき。金髪バンド少年と、学校一の秀才、タイプの異なる二人が、合唱祭をきっかけに惹かれあい、禁断の恋へと発展していく様を描いた本作。原作についてはまったく存じ上げず、予告動画を観た時点では、まさか劇場でそんなガッツリとボーイズラブをやるとは思いもよらず、よくて男同士の恋愛にも似た爽やかな友情劇だろうと高をくくってチケットを購入したところ、そのまさかの、ものすごいガッツリのボーイズラブだった(笑)。
 正直、この手のジャンルには免疫がなく、まして当然というか何というか、客のほとんどは女性、その中にスタンドアローンのオッサンは小生一人という、極めてアウェー然とした状況での鑑賞となったが、広い意味でいい経験になったし、少なくとも観た事自体に後悔はない。

 男同士の恋愛という、一部の理解のない人にとっては享受しがたい内容ではあるものの、ストーリーそのものは瑞々しく微笑ましい青春劇で、男女間でも多々あるようなすれ違いや衝突、そして、それでもお互いを想い、愛し合う気持ちを、ダイレクトに描いている点は、好感が持てた。
 主要人物の主人公二人と、彼等にアドバイスしたり、ちょっかい出したりするゲイの男性教員以外、極端に省略された線と色彩で描写。鉛筆と水彩絵の具のような淡いタッチの背景とともに、二人の関係を優しく俯瞰しつつ、後ろめたさや背徳感を孕んだ、しかし純粋で無垢な感情を表現する事にも、成功している。

 また、男目線的には「そんな思考回路の男いねぇよ」とツッコみたくなるような、オトメの迸る妄想力が生み出したメルヒェンのお花畑と言わざるを得ない場面も多数見受けられたものの、それ以上に、男の目からは分からないであろう、逞しさ等とはまた違う、女性から見た「男らしい」立ち振る舞い、あるいは仕草というものを確認できたのは、大きな収穫だった。
 例えば歌舞伎の女形(おやま)が、本物の女性以上に女性らしい動きや表情をするように、宝塚歌劇団のトップスターが、男性以上に男性らしく振舞えるように、客観だからこそ当事者が気づかない部分まで観察し、掴めるものがあるに違いない。その事を改めて思い知らされただけでも、肩身の狭い思いをしてまで、本作を鑑賞した価値はあったと断じたい。

 おそらく、桜Trickユリ熊嵐といった作品群は、女性からはこういう風に観えているのだろうと、妙な感慨を覚えてしまった(笑)。内容が内容だけに、万人にオススメとは言い難いが、上映時間も短く、値段も手頃なので、興味のある方は観て損はないかと。


 ちなみに、念のため書いておく。小生自身ゲイではないが、一応セクシャルマイノリティの方には、それなりの理解を持って接するようにしている。それが正しいかどうかは、神ではないので分からないが、小生のように誰も愛せない、誰からも愛されないよりはいいじゃん、と。

 ハイ、今回はこの辺で。


 ☆☆☆★★+

 しかし、映画館であんなに男同士のキッスを観たの、ショーン・ペン主演の「ミルク」以来だわ(笑)。星3つプラス!!


 いい機会なので、ついでにもう一つ。たまーに、小生のように結婚願望がまったくない者を見つけると「なんで?ホモなの?」と聞いてくるバカがいるが、こんなに的外れで幼稚な質問はない。
 じゃあお前は、同性愛者は全員、パートナーがいても結婚しないとでも?この前新宿区で、同性カップルに結婚と同等の権利を認める条例案が提出されたとき、多くのLGBTの方達が涙を流して喜んだのは、一体何だったんだ?
 仮にもしゲイだったとしたら、「結婚に興味がない」ではなく、「女との結婚に興味がない」と言うはずだろ。そうやって安直で薄っぺらい、狭い視野からしか物事を見とらんから、平気でアホな発言ができるんだよ。人をバカにしたかったら、相手より少しでもモノを知って賢くなってから来い。

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