「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」感想


 いがらしみきお原作のコミック「かむろば村へ」を、恋の門松尾スズキ監督・脚本・出演舟を編む松田龍平主演で映画化。お金アレルギーになった元銀行員の青年が、一円もお金を使わずに生きていくためにやってきた限界集落寸前の寒村で、異常に世話焼きな村長をはじめとした個性的な村人達とともに、ドタバタな日々を過ごすスラップスティックコメディ。

 松田龍平くん演じるお金アレルギーの青年を主人公にしつつ、村で起こる様々な事件や、西田敏行演じる「神様」を中心とした不思議な出来事を、群像劇的に見せていく構図はグッド。原作はどうか知らないが、主要登場人物のどの視点でもストーリーが成立するほどに、よく練られた人物相関は、さすがといったところ。
 ただそれゆえに、当の龍平くんの存在感が薄くなってしまい、ともすれば彼が本当に必要だったのか、お金アレルギー設定も別にいらなかったんじゃないか?と首を傾げたくなってしまうのは正直痛い。龍平くんも決してヘタな役者ではないのだが、如何せん彼に対して役が弱すぎ、しかもその脇に阿部サダヲモロ師岡片桐はいりさんといった松尾監督作品常連組の、個性で言えばずば抜けた方々が顔を揃えたがために、すっかり埋没してしまったように感じられた。

 また、ドタバタ劇の中に過疎化が進む田舎の農村の現状を盛り込みながらも、やはり機能的に作用していたとは言い難く、後半の微妙な展開も含め、点と点が繋がらず、線に成りきっていない印象を受けた。
 簡単に言うなら、エピソードの一つ一つ、ギャグパートの一つ一つは面白いのに、それが全て単発で終わっている感覚。全体に緊張感を張り詰めない、ユルい雰囲気を目指した結果なのかもしれないが、もう少しメリハリをつけていただきたかったところ。

 個人的に恋の門をはじめ、松尾監督の作風は好きだし、ギャグのセンスも昨今の糞つまらない芸人もどきの数倍は面白いと思っている。劇団大人計画を主催されるだけあって、俳優陣の使い方も、なるほどと思わせるストーリー運びも上手い。
 しかし今回に限っては、そういった個々がうまい具合に噛み合わず、相乗に至らなかったと言わざるを得ない。割と期待していただけに、残念。

 豪華俳優陣のハジけた芝居等、そこそこ笑えるシーンも多々あるものの、何がなんでも劇場で観るべき!ってほどでもないんで、ツタヤで見かけて気になったらレンタルしてみてもいいかも。まあ、今回はそんな感じで。

 ☆☆☆★★

 二階堂ふみ縞パンにオマケの星3つ!!