「ミッシングID」感想
ごく普通の高校生が、インターネットの失踪者リストで偶然見つけたのは、13年前の自分の写真だった。これまでの人生が偽りであった事に動揺しながらも、突如として現れた謎の組織からの追跡をかわしつつ、彼は真実を探るべく奮闘する。
実はストーリーも出演陣もほとんど知らず、ただ単に時間とタダ券が余っていたからという、かなり安直な理由で鑑賞した本作。
調べてみると、「ボーン」シリーズの遺伝子を受け継ぐ正統後継作、なんて触れ込みの割に、批評家からは結構ボロクソ言われたそうだが、それほどひどいとは思わず。もちろん、手を叩いて褒めちぎるような秀作ではないものの、期限切れ間近のタダ券がもったいない内容ではなかった。
主人公ネイサン演じるテイラーの、空手有段者らしいキレのある動きはなかなか良く、ヒロイン演じるリリー・コリンズのエロかわいさもまたグッド。
いきなり上半身裸になったり(テイラーが)、セクシーな下着姿を披露したり(リリーが)と、若干、人気急上昇中の若手俳優を起用したアイドルムービー的な趣きもなくはないが、正体不明の敵の追撃をすり抜け、場合によっては反撃に転じる様は、思いのほか小気味良い。
ストーリー自体に意外性こそないものの、彼を付け狙う謎の組織に加え、味方を自称する胡散臭さ全開のCIA局員に、彼を守るため秘密裏に行動してきた者達等、敵と味方が入り乱れる構図は面白く、アルフレッド・モリーナ、シガニー・ウィーバーといったベテラン勢の好演も相俟って、先の読めないスリリングな展開を形成していた。
(余談だが、「アレ?リリー・コリンズってもっと『ロッタちゃん』みたいなプンプクリンのパッツンパッツン顔じゃなかったっけ?随分すっきりしたなー」と思いきや、それはリリー・コールだった。同じリリーなのに、方や白雪姫、方や悪い魔女に精気を吸われてシワシワになる小娘。この差は一体…)
しかしそれだけに、ネイサンサイドとその他の視点の使い分けが芳しくなく、ややまとまりに欠ける部分があったのは、非常に惜しい。
ネイサンの正体、本当の親、狙われる理由。本作のキモともいうべきそれらの扱い方にもう一工夫あれば、まだまだ良いモノができたはず。そうでなくとも、敵側がその辺の事情を何度もベラベラ喋りすぎるのは、何ともいただけない。
また、ネイサンの友人、ラストの野球場のシーン等、あまりにご都合的に思える箇所も多く、あの辺で萎えてしまうユーザーもいたのではと、察してみる。
いいモノは持ってるのだが、どうも脚本がよろしくない印象。というより、このライターさんは、あまりアクションスリラーというジャンルを理解していない、あるいは前述のとおり、あくまでテイラーありきのアイドルムービーとして撮りたかったのではないかと、邪推したくなる。
いくら某剛毛ヴァンパイアと人気を二分した狼男くんでも、売り方というのを考えていただきたいところである。
そもそもこの邦題、および原題(「Abduction」=誘拐)は完全におかしい。ちょっとしたネタバレではあるが、別に彼のIDが消失したわけではなく、まして誰にも誘拐も拉致も略取もされていない。
それならば、むしろ「FalseID」(=「偽りのID」)、または単純に「Nathan’sID」でもよかったのでは。
おそらく、このタイトルから想像していた内容ではなかった、という理由で酷評した批評家もいたに違いない。どの国も、広報がアホだと苦労するなぁ…。
まあとはいえ、丸っきりつまんない作品でもないので、狼男以外のテイラーの活躍をスクリーンで観たい人なら、観て損はないかと。
その他の人は、多分DVDでもOK.。そんな感じで。
じゃ、小生の評価は…、
☆☆☆★★
星3つ!
だからさ、ネタバレしすぎだよこの予告動画。もうちょっと気ぃ使えって!