「外事警察 その男に騙されるな」感想
国益を守るためなら非道な手段も厭わず、場合によっては民間人の感情すら利用し、手駒とする通称「公安が生んだ魔物」住本健司の活躍を描いた本作。
「スパイ天国」と揶揄される我が国の暗部を背景にしつつ、核開発問題、韓国・北朝鮮の内部事情等、タイムリーなモチーフを絡めた、二転、三転、大逆転する重厚なストーリー、及び展開はグッド。
また、住本演じる渡部篤郎氏の、一見して人当たりのよさそうな紳士でありながら、仕草一つで一瞬にして身体中から漆黒のオーラを醸し出す、堂に入った芝居が実に秀逸。
どこからどこまでが本音で本心なのか分からない、底の知れない不気味さを見事に表現。本作を根底から支える屋台骨として、しっかりと存在感をアピールされていた。
が、その分、他の登場人物の影が薄くなり、すっかり食われてしまってるように感じる場面もしばしば。物語自体、基本的に地味な内容のため(オイ)、どうしても一番アクの強い人物に視線誘導されてしまうのはしょうがないにせよ、他の公安メンバー達の存在感がなさすぎる事も含め「もう、アイツひとりでやったらいいんじゃないか」状態になっている観は正直否めない。
住本の部下・松沢演じる尾野真千子、韓国人テロリストの妻で、物語の鍵となる女性・奥田果織演じる真木よう子等、ものすごくいい仕事をしているだけに、もったいない。
特に、内閣官房長官・村松久美演じる余貴美子さんは、彼女のポテンシャルから考えてみても、文字どおりの役不足に思えた。
確かに、余さんといえば大役からチョイ役までこなすオールラウンダーである点は疑う余地のないところだが、個人的に彼女がもっとも輝くのは、前にグイグイ出てくる内野手ではなく、少し離れた場所で睨みを利かせつつ、いざという時にスーパープレイを見せる外野手だと思っているので、どうにも本領を発揮できていないような違和感を憶えてしまう。
せめてワンカット、住本と官房長官が対面するシーンでもあれば、印象が変わったかもしれないが…。
(私見ながら、あの役は高島礼子さん辺りが適任だったように思う)
また、実は小生自身、これがテレビシリーズの続編だとはさっぱり知らずに臨んだ事を踏まえても、いまいち相関図が掴みにくかったのは、非常に惜しい。
ウィキによると、石橋凌氏演じる情報官・有賀と住本との間に、因縁のようなものがあるそうだが、「(住本が)自分をこの世界に引き込んだ張本人」と公言する松沢と合わせて、何かしらの説明ないしエピソードがほしかったところ。
そのせいか、住本の存在が余計にポコンと浮き上がって見えてしまっているように感じたのは、小生だけだろうか。
とはいえ、この手の骨太サスペンスものは大好きなので、今後もコンスタントに製作していただきたい。ハリウッド映画のような派手なドンパチとは言わないにしろ、もう少しケレン味があってもいいかなーという気もするが、まあ、これはこういうモンなんだという事で、納得しよう。ウン。
さて、いつも以上に簡単だけど、小生の評価は…、
☆☆☆★★++
いやでも、真木よう子の演技はよかったんだよマジでマジで。星3つプラスプラス!!