「マネー・ショート 華麗なる大逆転」感想


 俺たちニュースキャスターアダム・マッケイ監督クリスチャン・ベールスティーヴ・カレルライアン・ゴズリングブラッド・ピット他出演マイケル・ルイス「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」を原作に、サブプライム住宅ローン危機による経済破綻をいち早く見抜き、巨額の利益を得た人々の奮闘を描くノンフィクション。

 ちなみに「ショート(short selling)」は、空売りの意味。原題の「The Big Short(大きな空売り)」に対して、この邦題だと「お金がショート(電気回路的な意味で)」みたいな感じでダブルミーニングっぽくなるが、あながち間違ってないので別にヨシとしよう(エーー)。

 さておき、「華麗なる大逆転」というサブタイからして、世界中が経済危機で大混乱の中、意外な方法で大儲けに成功したインテリアウトロー軍団の痛快劇かと思いきや、この上なく残酷で重い現実をあらゆる角度から捉えつつ、そこに携わる人々の悲喜こもごもを丁寧に掬い上げた、ある種のドキュメンタリー的側面の強い作品だった。

 元がノンフィクション、しかも毎日日経読んでるような人じゃないと理解不能な経済用語が飛び交うだけに、お世辞にも山あり谷ありの分かりやすい内容とは言い難く、はっきり言えば地味。また、上記したとおりスカッと爽快なオチがあるわけでもなく、むしろ世の中の一番汚い部分を垣間見せられ、ドンヨリとした気分で劇場を後にする事ウケアイ。
 が、そこはコメディを得意とする監督らしく、主要人物それぞれをパート分けし、緩急をつける事で格段に観易くしたり、場面カットに遊び心を加える等、観客を飽きさせないよう工夫がなされていた点は、評価したいところ。
 同時に、小難しい金融用語や、からくりがよく分からない金融商品を、料理やカジノの例を使ってうまく説明してくれたのも非常にグッドで、必要最小限の知識をその場で得る事で、いい意味で敷居の引き下げに成功していたと評したい。

 しかし、小生みたいな高卒低所得には到底理解できない事は十分承知しているが、なぜ銀行や証券会社は、既に破綻寸前で回収不可能と分かり切っていた金融商品を、数値を改ざんしてまで売り、世界中を騙し続けていたのだろうか。自らの保身か、混乱を避けるためか、はたまた内部でもごく一部の者にしか知られていなかったのか、その辺りは素人でも思いつく言い訳だが、どこかの時点で、これ以上ウソを重ねると大パニックになると、ちょっと頭のいい人達なら気づいていたはず。

 混沌の只中にいると、自分が狂っている事にも気がつかないとはよく言ったものだが、彼らも飲み屋でストリッパーの姉ちゃんのパンツに捻じ込んだおひねりが、どこかの低所得層の組んだ法外なローンで得た利益と、知らないわけではあるまい。返すアテもないまま借りた一部の債務者も自業自得だ、と言えなくもないとはいえ、結果的に時限爆弾と化したバブル景気に、火薬を追加投入したに等しい。

 作中、ブラピが若いトレーダー二人に「経済が破たんすれば、何万人という人が家や職を失い、命を奪われる事になるんだ。それを忘れるな」と叱るシーンがあるが、彼等が手にした莫大な利益、そしてバブルとともに消失した何億、何兆という金は、そうした人々から絞り出された血と汗と涙に違いない。この一連の出来事は、究極的に経済とは誰のためにあるのか、金とは何のためにあるのかを、今一度考え直す法外な授業料であったと、思えてならない。

 とまあ、適当な事を書き殴ってしまったが、実際のところ本当はどうだったのか。こんなアホでも理解できるように優しく解説してくださる方、よろしければご教授願います(エー-)。

 毎度の事ながら、こういった作品を観ると、いかに自分がアホなのかを思い知らされるが、多少なり経済に興味を示すきっかけになれば。


 ハイ、今回はこの辺で。

 ☆☆☆★★+

 そういや本作の原作者、ブラピ主演で映画化された「マネー・ボール」書いた人なんだって。星3つプラス!!

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