「仮面ライダー1号」感想
仮面ライダーシリーズ生誕45周年記念作品にして、1972年公開「仮面ライダー対じごく大使」以来、実に44年ぶりとなる藤岡弘、主演ライダー映画。おやっさんこと立花藤兵衛の孫娘・麻由を、ショッカーの魔の手から救うため、本郷猛=仮面ライダー1号が、仮面ライダーゴーストとともに戦う。
まず何より、脚本とシナリオが酷い。ムダなセリフやカットの多さもさる事ながら、ショッカー内の新旧派閥争い、ゴーストとの掛け合いなどの使い方も上手くなく、どうしようもないリズムの悪さ、居心地の悪さを覚えてしまう場面が多々。
ビジネスとしての世界征服を掲げるノバショッカーはヨシとして、その方法が考えられているようでかなり雑な上、結局何も解決しないまま、ボスがブッ倒されたら終わりという、安直を通り越して投げっぱなし全開の展開には、ただただ唖然。
幹部の一人、長澤奈央演じるイーグラだけ何故最後まで怪人態にならなかったのかや、戦闘力的なスペックはさておいても、これまでの劇場版に登場した敵と比べて、ものすごく薄っぺらい組織のように感じられてしまった。
また、キャラクター同士のバランスが極端によろしくなく、おまけに上記したような余計なシーン、例えば冒頭のカラオケや、バーで殴り合うショッカー戦闘員といったお笑い要素が悉くスベリ倒した挙句、グダグダ感に拍車をかけているのは、痛恨の極み。
一応、現在放送中のライダーも立てねばならんという、配給元の事情も分からなくはないものの、正直ゴーストとスペクターが介入するメリットは、ほぼゼロ。それまでの大集合ムービーとは違い、他のライダーやスーパー戦隊が出てこなかった事、平成2期ライダー眼魂使用、大杉漣氏演じる地獄大使など、評価すべき点もそれなりになくはないとはいえ、一作品としての完成度は、思いのほか低い。
はっきり言えば、ここ数年の「スーパーヒーロー大戦」枠の中でも、最低の部類に入る出来と評さざるを得ない。
しかし、そんな事さえも気にならない、否、そんな事すらまったくどうでもいいと言い切れるくらい、本郷猛=仮面ライダー1号演じる藤岡弘、先生の存在感が、ただただ素晴らしい。ぶっちゃけ、藤岡先生のあの勇ましすぎる立ち姿をスクリーンで拝むためだけに、劇場に足を運ぶ価値は十分以上にある、本作最大にして唯一のセールスポイントと断ずる。
冒頭、ショッカー戦闘員に喰らわす前蹴り一発で、歴戦の深みと重厚さを体現する、齢70にして、あの逞しさ、あの凛々しさ、そしてあの説得力。愛する者を守るため、若者に未来を託すため、時に優しく、時に厳しく、己が傷つく事を厭わず、重篤の身を盾にして戦いに赴きながら、誰よりの命の尊さを知り、熱く語るその姿は、まさしく不器用で武骨な、しかし一本筋の通った昭和の男。男の中の漢。
本作のためにリデザインされた、マッシブで力強い、それでいてどこか哀愁すら漂わせる1号は、そんな本郷猛=藤岡弘、先生の象徴であり、男とは、ヒーローとはこうあるべきと背中で語る魂の具体であると感じられた。
ぶっちゃけ、放送前あれだけ「なんか太ましくね?」「動き重そうww」とネットで言われていたゴーストも、そんな極太1号を目の当たりにした後では、カラフルなマッチ棒にしか見えない。ネオサイクロン号にノーヘルで跨り、颯爽と現れるその雄姿だけでも、観る者全てのハートに、熱い正義の炎を灯す事ウケあい。
徹頭徹尾、藤岡弘、の、藤岡弘、による、藤岡弘、のため、THE・藤岡弘、ムービー。それ以上でもそれ以下でもなく、ある必要もない。もっと言うならば、藤岡弘、先生が出ているシーン以外、全てカットしても成立するぐらいの、藤岡弘、濃度1200%映画。特撮ファンなら、否、男なら観るべし!
☆☆☆★★
藤岡弘、先生、勉強させていただきました。ありがとうございました!!星3つ!!
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