「セーラー服と機関銃 -卒業-」感想


 赤川次郎原作。1981年、薬師丸ひろ子主演で歴史的大ヒットを記録したセーラー服と機関銃の後日談を、「夫婦フーフー日記」前田弘二監督「天使すぎるアイドル」こと橋本環奈初主演で映画化。

 約35年前の伝説的ヒット作の続編ながら、次世代のトップアイドルを担うであろう橋本環奈のプロモーション、いわば「箔付け」が狙いなのは一目瞭然。ために、往年のアイドルムービー然としたモノ以上を望んではいけないと肝に銘じての鑑賞であったが、まったく予想通りの、往年アイドルムービー然とした出来だった。

 赤川先生を悪く言うつもりはないが、展開といい、芝居といい、演出といい、画面に映るほぼ全てのモノが、原作発表の1987年頃そのままのような、バブル期前後の金の掛け方間違えまくった悪い時代の角川映画を彷彿とさせる、何とも言えない古臭さ。
 加えて、まるで厚みもリアリティも感じられない薄っぺらいストーリーに、適当な泣き要素ぶち込みと、これまた安っぽい仕様。さらに、登場人物のオーバーリアクションとわざとらしい動きが、負の連鎖に拍車をかけている。

 子分二人の面白みもヘチマもないポンコツキャラもさる事ながら、何のためいたのかさっぱり分からない、クラスメイトの男子3人。敵役に関して言うなら、ただただウザく、ムカツくだけのアクションに正直ゲンナリで、まさかとは思うが、あれで例えばダークナイトジョーカーのような強敵感を出そうとしていたとするなら、悪いが失笑せざるを得ない。
 モブキャラもまた最悪で、ついさっきまで見向きもしなかった目高組のカフェに、市長の号令一つでプラカード掲げて抗議に殺到するなど、おおよそ個人意思を持った人間の行動とは思えない。しかもその後、何事もなかったようにシレッと元通りの生活に戻っているとか、あまりにも不自然すぎる。
 敵の本拠地にしても、警備している若い衆の一人もいない(いや、一人はいたけど)のもおかしな話だし、そもそもにして、あんな胡散臭い企業の胡散臭い詐欺まがいの商売、日本各地で展開しててボロが出ないわけはなく、ましてそれを、半グレみたいな兄やん一人でヤクザや警察官を丸め込んで大胆不敵になど、不可能を通り越してもはやお伽噺の世界。
 主人公から末端の端役に至るまで、登場人物全員が物語というパズルを構築する1ピースである事を理解していない、典型例と断ずる。

 また、オリジナル(と言うべきか?)を意識してか、やたらと挿入される長回しや、ハンディカメラによる近距離撮影なども、大した効果を得られず、そこに映し出されるアドリブじみたやりとりが、余計に話のテンポを悪くし、場の空気の壊している点も痛恨。
 おそらくは、橋本環奈の素の表情を撮るべく、できるだけ演技をさせないよう努めた結果と察するが、おかげで深夜のサムいバラエティ、あるいはAVの雑なストーリーパートのような、完全な蛇足になっている点に、どうして誰も気がつかなかったのか、実に不思議である。

 組と街のこれからを憂う場面や、今まさに敵陣に乗り込むシーンで、なぜJKがオジサン達と楽しそうに談笑しとるんだ。身体を張って大役に挑んだ橋本環奈の頑張りは認めるし、まだまだ拙い演技力にも多少目を瞑るとしても、これから女優業をこなしていくなら、今後はこんないい加減な仕事をしてはいけない、若さと可愛さが武器になるのは今だけだと、オッサンなりの苦言を呈しておく。

 カタルシスカタルシスになってない、落ちるべきところに落ちてない。橋本環奈の可愛さ以外、何もかもがちゃちでチープで時代錯誤な一本。角川だけでなく、日本映画界はそろそろこういった茶番劇から「卒業」すべきではないのか?


 余談だけど、キャバクラで撃ち合いになるシーンで、警察署から逃げてきた武田鉄矢が、ハンガーヌンチャクでヤクザを一掃してくれたら、評価もだいぶ変わってたと(ネェヨ)。

 ☆☆★★★

 フ・カイ・カン!星2つ!!

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