「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」感想


 ユージュアル・サスペクツクリストファー・マッカリー監督トム・クルーズ主演の人気スパイアクションシリーズの第5弾。IMFのエージェント・イーサン・ハントが、謎の犯罪組織「シンジケート」を壊滅させるべく、CIAから国際指名手配を受けながら世界中を飛び回る。

 往年の傑作スパイドラマスパイ大作戦の映画リメイクとしてスタートした同シリーズも、気がつけば本作で19年目。その間、主演は一度も変わることなくトムさんが演じ、しかも御年53歳にしてアクション面は衰えるどころか、毎回ハードさを増しているのだから、まったく頭が下がる。
 前作の感想で「もし次回作があるなら、彼の年齢を考えても主演はジェイク・ギレンホール辺りに交代してはどうか」などと書いてしまったが、この調子だとサイクル的に4、5年後公開されるであろう次回作と、そのまた次回作まで、今と変わらぬ爽やか笑顔とキレキレのアクションを披露してくれそうで、逆に怖い(エー)。あのジャッキーでさえ、還暦を前にアクション大作への出演は引退した事になっているというのに、もしかしたらハリウッドには、一部のトップスターのみ使用が許される、肉体の老化を食い止める特殊な医療技術のようなものでもあるんじゃないのだろうか。そんな技術があるなら、まず何よりこっそり身長を10cmぐらい伸ばせばいいのn(以下略)。

 さておき。すっかり老舗シリーズの仲間入りを果たしてしまった本作だが、ここへ来て安定感を出しつつ、さらにもう一段階上に到達したという印象。お約束の指令シーンからして、これまでにない意外な展開に始まり、IMF解体で孤軍奮闘を余儀なくされるイーサンと、CIAの監視を潜り抜けながら彼に協力するメンバー達による、謎の犯罪組織との、追いつ追われつのスリリングなデッドヒートを繰り広げてくれる。

 常にイーサン達の一歩先を行くような、ショーン・ハリス演じる凶悪さ、頭脳、得体の知れない不気味さともに歴代屈指の強敵の存在もさることながら、レベッカ・ファーガソン演じる正体不明の女スパイイルサが、敵味方両方をうまい具合に引っ掻き回してくれる盛り上げ役として、見事に機能していると感じられた。
 ジェームス・ボンド然り、正直各国を代表するエリート諜報部員が、毎回のようにお姉ちゃんにコロッと騙されてどうすんだ、とも思ってしまうが、まあそういう不完全さも含め、彼らの魅力という事にしておこう。

 気にある点があるとすれば、お馴染みのスパイガジェットの活躍が思いのほか少なくなり、その代わり予告動画で全世界のド肝を抜いた、飛び立つ飛行機のドアにしがみつく空前絶後の体当たりスタントに代表される、トムさんの類まれなる身体能力を駆使したアクションにウェイトを置いたように感じた事。前作の時点で、iPadが普通に使われていたように、よほど特殊なモノでもない限り、既に一般人が家電量販店で買えるアイテムと、スパイの秘密道具との差がなくなってきていると察するが、本作に限って言えば、このチョイスはベターであったと評したい。
 数年前、かの傑作海外ドラマナイトライダーをリメイクした際も、同じような理由でアイデアを出すのに苦労した、と何かで読んだ気がするが、本作もまた、リアリティを保ちつつ、観ている人々が驚くようなアイテムを生み出すのが、どんどん難しくなってくるに違いあるまい。もちろん、常軌を逸した無謀なスタントも死なない程度に頑張っていただきたいところだが、やはりスパイと言えば、身に着けた日常品に様々な特殊装備を詰め込み、いざという時にそれらを駆使するのが醍醐味と思われる。今後、どういった形でこれを克服していくのか、注目したい。

 要所要所にコメディ要素を加えたり、新しい事に挑戦しつつも、これまでの集大成を思わせるシーンも多々。過去シリーズからのファンも、本作が初めての人も楽しめる、まさにスパイアクションの一つの到達点と言える良作。冒頭の製作・配給会社ロゴに、やたら中国系企業の名前が多くて、「あれ?今からカンフー映画観るんだっけ?」とかなっちゃったのはナイショ(笑)。


 ☆☆☆★★+++

 んーでも、やっぱりジェイク主演の「M:I」も観たいなー。あ?テイラー・ロートナー?何言ってんだお前アホか。星3つプラス3つ!!