「メイズ・ランナー」感想


 ジェームズ・ダシュナー原作のヤングアダルト向けSFスリラー小説を、TVドラマティーン・ウルフ」(2011年)ディラン・オブライエン主演で映画化。記憶をなくし、巨大な迷路に囲まれた謎の施設へと送り込まれた少年たちが、脱出を目指して奮闘する。

 原作に合わせて、三部作での公開が予定されている本作。設定とビジュアルからして、某ヴァンパイアバカップルのイチャコラムービーや、某ゆるゆる殺し合いサバイバルムービーと同じような匂いが漂い、実際、ネットでの評判もかなり微妙。正直、うっかりムビチケを買ってしまった手前、仕方なく観に行った次第で、普段なら地雷回避のためにスルーが定石の作品だったりする。

 で、まあ、そのうっかりの結論はというと、案の定大絶賛するようなモノでもなく、色々と言いたい事はあるにせよ、思いのほか悪い内容ではなかった。少なくとも、上記した二作よりはまともな出来で、秋か冬頃に公開予定の「2」を観てもいいかなーと思わせる程度には完成されていたと評する。

 少年達が共同体と形成し、協力し合いながら迷路の攻略を目指すという設定は、いかにも少年漫画誌ラノベにありがちながら、なかなかに見応えアリ。それぞれが役割を持ち、一つの集落として機能していく中で、それぞれの主張・思惑が表れていくのもグッド。
 また、迷路内で遅い来る異形のクリーチャーとのバトルも熱く、木で作った槍以外、大した武器のない中、地形などを利用して対峙、あるいは逃げる展開は、不覚にも手に汗握ってしまった。

 ただその分、話しがテンポよくポンポン進む一方、細部や説明が雑で、そちらにばかり意識を持っていかれてしまったのは、非常にもったいない。専門用語もムダに多く、しばらくして「えっ?それ何だっけ?」というのが多少見受けられたのは惜しいところ。
 そもそも、「(脱出するのに)お前が考えそうな事は全て試した」というが、例えば壁をよじ登るにしても、木を切って簡単な建物を組み立てるぐらいの事ができるのだから、足場を作ってちょっとずつ登ればいいじゃない、とか、壁に足をかける穴を開けてく、あるいは杭のようなものを打ち込む、とか、色々思いついてしまう。それらも全て、一度試しているというのだろうか?
 この手のシチュエーション作品は、設定に穴が見えてしまった途端、一気に覚めてしまう。そういう点をいかに丁寧に潰していくかが、成功のカギといっても過言ではないと断言するが、次の章までには改善されている事を願う。

 あくまで個人的見解で、もう一つ付け加えると、こういった作品は、主人公一人にフォーカスせずに、できるだけ多くのキャラクターの視点を取り入れ、群像劇としての側面を持たせた方が、圧倒的に面白いと察する。もちろん、それだけ技術も繊細なキャラクターバランスも要求されるが、せっかくこれだけの舞台が整っているのなら、挑戦してみる価値はあったと断ずる。

 最後はおおよその予想通りというか、まあそうですよねーってな感じではあったものの、どう決着をつけるかはそれなりに興味がある。くれぐれも、既に観る気が失せた某ハンガーなんとかゲームのようなユルい展開にならないよう、注意していただきたく。

 ところで余談。やたらと主人公と対立してたギャリーとかいう小僧、どっかで見た事あるなーと思いきや、「なんちゃって家族」に出てたDTか。

 ☆☆☆★★

 つーかコレ、「進撃の巨人」かなり意識してるよね…と思いきや、原作はこっちの方が先だった(笑)、星3つ!!