「イニシエーション・ラブ」感想


 乾くるみ原作のミリオンセラー小説を、「悼む人」堤幸彦監督LIAR GAMEシリーズの松田翔太×もらとりあむタマ子前田敦子主演で映画化。

 元海砂利水魚ことくりぃむしちゅー有田哲平をはじめ、多くの芸能人が絶賛。「あなたも騙される」「必ず二回観る」との挑戦的なキャッチコピーでも注目を集めた本作だが、率直な感想を書かせていただくと、ぶっちゃけ「クソつまらん」の一言に尽きる。

 まず第一に、「あなたも騙される」残り5分のオチに持って行くまでの、要するに全尺のほとんどを占めるドラマパートが、絶望的につまらない。最後の最後で引っくり返すから、少々手を抜いてもいいと思ったのか、はたまた監督が別の映画の撮影で忙しかったのか、ただでさえ1980年代の安っぽいメロドラマ調のストーリーを、さらに水で250倍ぐらいに薄めたような、とにかく面白みも意外性も感情移入の余地もまったく何にもナシのナッシングな内容。
 あまりに退屈すぎて、途中眠気どころか寒気で意識が朦朧とし、危うく映画館で凍死寸前まで追い込まれてしまった。

 肝心のオチについても、残り5分どころか前半の途中におおよその見当がついてしまうスカスカ加減で、奇を衒った一発ネタにしても雑でチープ。さり気なく隠しヒントを散りばめたつもりなのかもしれないが、あれでは隠しているどころか、ネタばらしをしながら手品をしているようなもの。あんなチンケなトリックみたいなモノで、一体誰が騙されるというのか。観客をバカにするにも程がある。

 加えて言うなら、ヒロイン演じる前田敦子のぶりっ子演技が、健気にも献身的にも見えず、怪しさ全開。マナーとしてネタバレは避けるが、確実に裏がある事を予感させる、見事なまでのオウンゴールをぶっかましてるのは、痛恨のマイナスポイント。
 「女はいつでも一枚上手なのよ、オホホ」ってな感じの事がやりたかったと察するが、それならばもう少しナチュラルに、普通の女の子を演じるべきでは?まだ役者として発展途上である事を踏まえても、彼女にこの役は荷が重すぎたと言わざるを得ない。

 一部ではこれをミステリーと評する声もあるそうだが、こんなものはミステリーどころか、コントとしてすら成立していない。せいぜい、某「世にも奇妙なナントカ」内20分前後の1エピが限界で、とても一本の映画になりえるポテンシャルは備わっていなかったと断ずる。

 非常に酷な言い方をしてしまうが、これを観て本気で「うわー、全然分からなかったー。完全に騙されたー」「よーし、確認のためにもう一回観ようー」なんて思える人は、そうはいないだろう。個々人の趣味趣向や感性に口出しする気は毛頭ないが、仮にもしいたとしたら、それはラッスンなんたらで腹筋が崩壊するほど大爆笑できる、ある意味幸せな人なのかもしれない。
 いや、もしかしたらそういう人が大多数だから、こういう映画が撮られてしまうのか?だとしたら、それは映画界全体の不幸だ。

 何度も言っている事だが、この手の「必ず騙される」だの「ラスト数分で覆される」だのというキャッチコピーは、逆に安易にオチを想像させ、作品そのものの価値を著しく下げる結果になりかねない。広報関係者各位には、いい加減その辺を理解するとともに、本当の意味でユーザーを気持ちよく騙す方法を熟考していただきたい。


 褒めるところがない、ボロクソ書かざるを得ない、これ以上書く事もない、そんな映画。じゃ、今回はそんな感じで。


☆☆★★★−−

 それからエンドロールの80’s図鑑、アレも完全に蛇足。星2つマイナスマイナス!!


 追記の余談。劇中曲に木綿のハンカチーフ使われてたけど、アレは80年代じゃないから。1975年の曲だから。そういう点も含めて、全体的にスイートネイルだね。