「ジュピター」感想


 マトリックスシリーズのウォシャウスキー姉弟監督・脚本・製作、G.I.ジョーチャニング・テイタム×ブラック・スワンミラ・クニス主演。家政婦として働くジュピターが、地球を支配する王朝の次期女王である事を知らされた事をきっかけに、権力争いに巻き込まれながら宇宙を股にかけた冒険を繰り広げるSFアクション。

 いかにもディズニーライクなプリンセスストーリーを、ウォシャウスキー姉弟に好き勝手にアレンジして撮らせたらこんな風になりました的な内容。例によってSF設定や数々のガジェット等、世界観は割と嫌いではないものの、物語としては正直パンチが弱い印象を受けた。

 まず何より、展開にメリハリがなく、全体的にもっさりした感じになっているのがよろしくない。平凡な家政婦が、ある日突然謎のエイリアンに襲われたかと思いきや、颯爽と現れたイケメンハンターに救助され、そのままイチャラブ逃避行ってのはともかく、その「一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえない」がことごとく弱く、ハラハラドキドキ感があまり味わえなかったのは、手痛いところ。
 察するに、チャニング演じるケインが、生身で宇宙に放り出されたり、戦闘機で単身敵陣に乗り込んだりするのに対し、ミラ演じるジュピターが基本受身だったのが原因ではないかと。確かに、プリンセスストーリーとはそういうものかもしれないし、最後の方では彼女なりの勇気ある決断と、鉄パイプを振り回す勇姿も披露されるのだが、スカーレット・オハラのようなとは言わないまでも、自分の運命は自分で切り開いちゃうわ、ぐらいの肝っ玉を見せてほしかったところ。

 また、ジュピターを狙う王族3兄弟にしても、それぞれほぼ最初から思惑が知られているため、緊張感・緊迫感ともにゼロ。目的は同じとしても、せめてお互い腹の内を見せないまま、いい意味で騙しあい・潰しあいをしてくれていた方が、ストーリーに厚みが増したように思える。
 さらに言うなら、冒頭から思いっきり大風呂敷を広げすぎたために、上記した兄弟の小競り合いも含め、終始予想以上のモノが出ず、妙な既視感にも似たモノを覚えてしまった。あまり上手い例えではないが、まるで手牌を全てオープンにして打つ麻雀のような、あるいはタネの分かった手品を見るような感覚。やり方さえ工夫すれば、ここまで薄っぺらい内容にはならなかったのでは。返す返すも、勿体ない。


 まあとはいえ、ケインが履く空飛ぶブーツや、メカの変形機構等、観るところもないわけではない。個人的には、王位を継承する手続きの一連が、お役所って全宇宙であんな感じなのかとちょっと笑えて好きだった。
 今さら、マトリックスのような革新的映像や斬新なストーリーを期待している稀有な人もいないだろうが、あえて言うならクラウドアトラス」よりは上、Vフォー・ヴェンデッタより遥か下、スピード・レーサー…えっ、ナニソレそんなのきいたこともないよ?ってな具合。

 とろこで余談だけど、バレム王役のエディ・レッドメイン、怒鳴ってる時以外かすれ声で何言ってるか全然聞こえなかったのは何仕様なの?

 じゃ、今回はこんな感じで。

 ☆☆☆★★

 ちなみに木星はあんまり関係ないです(笑)、星3つ!!