「イントゥ・ザ・ウッズ」感想


 「シカゴ」ロブ・マーシャル監督。おとぎ話の主人公達のその後を描く、トニー賞受賞のブロードウェイミュージカルを映画化。

 日本でもお馴染みの物語のキャラクターを、メリル・ストリープをはじめ、アナ・ケンドリックエミリー・ブランドクリス・パインら豪華メンバーを演じる、まさにハリウッド版おとぎ話オールスターズ春のカーニバルという趣きながら、実際のところ中身はスカスカ。オリジナルがどうかは与り知らないが、一本の映画としては寄せ集めのやっつけ観満載、非常に底の浅い作品に思えた。

 第一に、登場人物とその相関に、必然性が感じられない点。赤ずきんちゃんにしろ、シンデレラにしろ、たまたま同じ場所に居合わせたというより、話のために世界観を無視してムリヤリ引っ張ってこられたような、ポーンとそこに置かれた印象で、加えて毒舌大食いキャラや誰々と誰々が兄弟等、色々と弄くったヘンテコ設定も、ほとんど機能していなかったのは正直痛い。

 パン屋の夫婦が、魔女にかけられた呪いを解くために探すアイテムにしても、何故それを集めなければならないのかという合点のいく説明もなく、多くの伏線も未回収というより、何かやってみたかっただけみたいな、やはり設定を消化するのにムリヤリ捻じ込んだ観全開。ハッピーエンドのあとの後日談を売りにしつつ、そこに辿り着くまでに全尺の約3/4を消費した挙句、内容は恐ろしく薄っぺらで面白みの欠片もないでは、もはや何がセールスポイントなのかすら分からない。

 身も蓋のない事を言ってしまうようだが、これは舞台で観るから面白いのであって、映画には尽く向いていなかったのではないだろうか。目の前で実際に俳優が演じ、歌うのならまだしも、ただでさえ間延びしたこの展開に、途中でいちいち「♪おお、愛しのあの娘よ〜」だの、「♪空の上には巨人の国が〜」だの歌われたら、それは観ている側はイライラするに決まっている。
 「シカゴ」は個人的に大好きな作品なので、あれぐらい楽しく歌って踊るファンタジー作品が観られると、大いに期待していたのだが、何とも残念。

 教訓のようなモノもあるようなないような、オチもハッピーエンドなんだか行き当たりばったりなんだかと、全てにおいてさっぱり。最近よく見かける大人向けダークファンタジーを謳いつつ、実質、バカな大人は騙せても子供は騙せない似非ファンタジームービー。これならシュレックか、auのCMか、あるいは桃太郎伝説の方がまだマシと断じる。

 一応フォローもしておきたいが、赤ずきんちゃん役のリラ・クロフォードが可愛かったぐらい。つーかジョニデ、あんなチョイ役で本当によかったのか…?


 ☆☆★★★+

 で、なんでパン屋が主人公なの?ジョニデに免じて大マケの星2つプラス!!


 余談。本作に限って言えばの話だけど、シンデレラって実は超他力本願女じゃね?だって基本、自分からは何もしてないじゃん。あれでもしブサイクだったら、舞踏会なんざ行っても王子から顔面にローリングソバット食らうだけだぞ。結局、男も女も見た目か!!(暴言)