「ふしぎな岬の物語」感想
森沢明夫原作の小説「虹の岬の喫茶店」を、吉永小百合企画・主演、「八日目の蝉」の成島出監督で映画化。千葉県鋸南町を舞台に、岬の喫茶店を経営する女性と、その周囲の人々の悲喜交々を描く。
誤解を恐れず言えば、吉永小百合氏は実に不思議な御仁である。浮き沈みの激しい芸能界において、半世紀以上も日本を代表する名女優であり続けると同時に、出演者の覧にその名が記されているだけで、ものすごい大傑作でなくとも、よっぽどおかしなモノは出てこないだろうという、妙な安心感を覚えてしまう。
それが生まれ持った才によるものか、はたまた長年の女優生活で培われてきたものか、あるいはその両方かは存じ上げないが、歳が一回りも違う阿部寛氏と並んでもまったく見劣りしないどころか、圧倒してしまう存在感は、例えば同年代の倍賞美津子さんや樹木希林さんとはまた違う、唯一無二にして孤高のポジションと言える。
そんな吉永女史が初めて企画から関わったという本作だけに、内容としては正直何の変哲もない、義理と人情のアッサリ風味イイハナシダナー的ストーリーなのだが、彼女が中心にいるだけで、何となく成立してしまう、文字どおり不思議な物語。
とはいえ、CGバリバリのドンパチアクションや、あっと驚く超展開もない、こうした何の変哲のない人々の日常を描く事こそ難しく、それだけ演者と製作者の技量が問われるわけだから、彼女自身がいかに超然とした女優であるかを、逆説的に証明した作品とも言える。…いまいち、自分でも何を言ってるかよく分からんが(エー)。
もちろん、前述した阿部氏や竹内結子、笑福亭鶴瓶師匠といった豪華共演者の名演も素晴らしく、成島監督らしい美しい景観と、そこに暮らす人々の機微を丁寧に捉える手腕もさすがの一言。硬派なイメージのあった監督だが、こういう柔らかいタッチの絵も撮れるのかと、変なところで感動してしまった。
余談だが、個人的にはチョイ役で出演した小池栄子の、クズ女っぷりがすごく面白かった。本当に彼女は、何でもできる女優だな。
若い人にはちょっと薄味すぎるかもしれないが、いわゆる「サユリスト」世代の方々にとってはちょうどいい塩梅と察する。まあ、たまにはこういう作品で、古き良き日本映画の手法に触れてみるのもアリかと。
じゃ、今回も超簡単だけど、こんな感じで。
☆☆☆★★+
阿部氏の生尻分、オマケの星3つプラス!!(エーー)
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